人材

基本的な考え方

KONOIKEグループの強みの源泉である「人」の成長こそが、持続的な企業価値向上を実現する上で不可欠であると考えています。2030年ビジョンでは、教育・訓練など「人」への投資を通じ、「人」の能力を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげていこうとする「人的資本経営」に取り組んでいます。中期経営計画2027においては、働き方改革の再加速、処遇改善や社員教育など積極的な人への投資、採用活動の強化、人事制度の見直し、事業戦略に基づく人材育成の推進などの諸施策の実効性を高めるために、2025年4月より取締役会の諮問機関として「人材戦略委員会」を設置いたしました。もう一方の取り組みの柱である従業員のウェルビーイング向上も、2023年3月期より実施しているサーベイのスコアをモニタリングしながら、課題の抽出と改善施策の実行によるPDCAサイクルを構築し、人的資本をさらに強化しています。

2030年ビジョン

経営戦略に基づく⼈材育成の推進

(a)事業戦略に即した事業系⼈材育成

KONOIKEグループには多岐にわたる事業形態があり、それぞれの個別の事業戦略に即した人材戦略が必要です。「どのようなスキルを持った人材が、いつまでに何人必要か」、明確な目標を設定し、計画的にさまざまな事業部門でプロフェッショナル人材を育成してまいります。そのためには、これまで会社を支えてきた基盤事業のみならず、空港・メディカル・エンジニアリングなど、2030年ビジョンにおける注力事業にも必要な人材を配置するKONOIKEグループ全体の人材ポートフォリオづくりが重要な課題となります。2030年にそれぞれの事業としてありたい姿を定め、それに必要な人材をバックキャスティングする人材マネジメントを構築します。その準備として、2021年にタレントマネジメントシステムを導入し、人材情報の可視化を進めました。今後は経営人材や事業系エキスパートなど、一定要件を定めた人材をプール化し、新たな仕組みによる育成を進めてまいります。

(b)専門性の⾼いコーポレート系⼈材育成

当社は2022年4月に東京証券取引所のプライム市場に移行し、さらに高いガバナンスが求められるようになりました。そのため、経営企画・法務・総務・人事・経理といったコーポレート部門において、より高い知識と統制力のあるプロフェッショナル人材を社内で育成していま
す。これまでの取り組みとして、高度な知識やスキルを養うために、部門ごとに階層別の職務基準書の整備を行い、計画的に人材育成を進めています。階層ごとに水準の異なる職務基準書に記載の業務レベルをクリアしているかどうかというポイントでトレースをすることにより、個々のスキルの到達点と育成強化点を分かりやすくした上で、効率的な指導が行えることに加え、スキル習得のモチベーションアップや、階層レベルの均質化などさまざまな効果を生んでいます。こうした育成方法を進めることで、専門性の高いコーポレート系人材を育成する仕組みが整いつつあります。

(c)「部門を越えた連携」による課題解決⼒・提案⼒の⾼い⼈材育成

KONOIKEグループでは、多岐にわたる分野で事業を展開し、それぞれの分野で豊富なノウハウを有していますが、お客さまに提供するサービスの品質向上や付加価値の創出には、それらのノウハウをグループ内で共有し、部門間で連携して活用できる高い課題解決力・提案力を持った人材の育成が必要と考えています。具体的には、人事面において、さまざまな経験を積み知見を広げるために、若い世代からのジョブローテーションや、管理職層の部門をまたぐ人事異動を積極的に進めています。そして教育面においては、課題解決力・提案力を向上させるためのカリキュラムを充実させるとともに、各グループ会社の従業員が合同で学ぶ階層別研修・公募型研修を開催することで交流の機会を増やすなど、人事と教育の両輪での人材育成を進めてまいります。

(d)技術革新・ICT部門の専門性強化および全社でのリテラシー向上

経営を取り巻く環境が目まぐるしく変化し、将来の予測が困難になってきているなか、事業環境の変化に合わせた事業変革の重要性が高まっています。KONOIKEグループでは、事業変革に必要な技術革新・ICTの専門性を強化するために、全社でのリテラシー向上を目指した「現場が変わる先端技術講習」「AIプログラミング講習」を2020年より開催しており、2023年には動画教材「DX入門講習」を作成し、すでに従業員の約9割が受講を終えています。さらに2025年度からは、講義・実践を通じてDXを推進できる中核人材となるためのマインドや思考法を習得することを目的としたDXビギナーズプログラムを開始し、入社6年次社員に必須受講としたほか、年2回の公募も計画しています。KONOIKEグループの2030年ビジョン「技術で、人が、高みを目指す」の実現と、さらなる成長、企業価値向上を実現するために、今後も引き続き、技術革新・ICT部門の専門性強化と全社でのリテラシー向上のための取り組みを充実させてまいります。

従業員の働き甲斐(エンゲージメント)の向上

(a)企業理念の浸透

KONOIKEグループの成長・企業価値の向上のためには、従業員が会社を信頼し、進むべき方向性を十分理解した上で、貢献意欲を持って働くことが大切です。その前提として、社員の一人ひとりがグループの企業理念や行動指針などを定めた「KONOIKE BRAND」を理解し、日々の仕事の中で実践することが肝要であり、これらを醸成するために、経営層と従業員が幅広く対話するワークショップ形式の「カタリバ」により、インナーブランディング活動を進めてきました。また、2025年5月には、私たち一人ひとりが「人として」どう振る舞うべきかを常に自問し、意見交換できることを目的として、全従業員を対象にKONOIKE手帳を配布しています。KONOIKE手帳も活用することで、「KONOIKE BRAND」のさらなる浸透を図ってまいります。

(b)従業員の幸せの追求

健康経営

当社は、2023年2月に「健康経営宣言」を策定し、従業員のパフォーマンスや人材の安定的な確保と定着率を向上させるための重点施策に取り組んでいます。2024年3月には、従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実施する健康経営の取り組みが優良であるとの評価を得て「健康経営優良法人2024(大規模法人部門)」に認定され、続けて「健康経営優良法人2025(大規模法人部門)」にも認定されました。併せて、健康経営の一環として推進する従業員の運動習慣の定着のための取り組みが評価され、2023年12月にはスポーツ庁より「スポーツエールカンパニー2024」に認定され、「スポーツエールカンパニー2025」にも継続認定されています。今後も、メンタルヘルスに関する施策や健康管理システム導入などの取り組みを強化するなど、健康づくりのためさまざまな施策を推進し、従業員一人ひとりが心身ともに健康で活き活きと輝くことで幸せを実現できるよう健康経営に積極的に取り組んでまいります。

エンゲージメントサーベイ

仕事を通じて感じる幸福度は、パフォーマンスとの関係性が高く大きな影響を与えます。ライフスタイルや働き方が多様化するなかで、従業員一人ひとりのウェルビーイング(幸せを感じる状態)を実現するために、2022年11月にパーソル総合研究所による「ウェルビーイング・サーベイ」を実施し、働く幸せ実感と働く不幸せ実感、およびその下地となる組織の状態を計測しました。2024年2月には2回目のサーベイを、2025年1月には3回目のサーベイを実施しています。今後もスコアの改善や回答率の一層の向上を追求しつつ、結果のフィードバックを
通じて、企業風土の改善と、拠点ごとの特性に応じた改善に取り組むことにより、より良い企業風土づくりにつなげ、結果として従業員が仕事を通じて幸せを実感し、それぞれの持つ能力が最大限に発揮される状態を目指してまいります。

経営戦略に基づく人材育成の推進

人材育成において目指す姿

人材育成については、従来の全社員対象の年次・階層別の能力向上教育に加え、経営戦略に基づく人材育成を推進するために次の4つを求める人材像としています。

現場を知るマネージャー

いつの時代も当社が最も大切にしているのが現場力であり、これを維持するために人事制度の見直しや現業を担当する専門職社員へのマネジメント教育を進めています。

グローバル人材

2031年3月期の海外事業売上高目標1,000億円達成に向けたグローバルビジネスを担う人材を育成するため、当社独自の教育プログラムを設け受講修了者の人材プールを進めています。

技術系人材

2030年ビジョンに掲げた「技術で、人が、高みを目指す」という姿を実現するために、基盤事業を支える施工管理系エンジニアの増強に加え、先進テクノロジーが活用できるイノベーション人材の育成にも取り組んでいます。

経営人材

将来の経営を担う人材の育成も取り組みを進めています。さまざまな事業や職場経験を通じて人格・能力共に磨かれることから、人材ポートフォリオの構築に向け長期的なキャリアパスによる計画的な配置を実践し育成を強化しています。

施策

採用システム

当社は、持続的な企業成長に向け、役割に応じて人材を採用する体制を整備しています。総合職は、異なる部署での経験を通じて幅広い視野を持つ人材として成長し、組織のマネジメントを担っていきます。専門職は、地域に根づいて経験を積み、技術を習得して組織の専門性の向上に貢献します。このような多様なキャリアパスを支援するために、2024年には採用ページを一新し、それぞれの職種の魅力やキャリア形成の可能性をより明確に発信しました。また、変化する社会ニーズに対応するため、総合職、専門職共にキャリア採用を推進し、即戦力人材の登用を拡大しています。さらに、カムバック・アルムナイ採用を通じて、在籍時の経験や企業理解を持つ人材の再参画を促進するため、利用しやすい仕組みに整備しました。今後も、多様な人材が活躍できる環境のもと、人的資本の質的向上に継続して取り組み、従業員一人ひとりの可能性を最大限に引き出してまいります。

タレントマネジメントシステム

当社では、2021年にタレントマネジメントシステムを導入し、人材情報の一元化と可視化を実現しました。これにより、ハイポテンシャル人材を含めた計画的な人材育成や適正な人員把握、適材適所の実現に取り組んでいます。導入以前は、経営層や各部門長が他本部の社員の経歴やスキルなどの情報を把握することが難しく、人事部門がその都度必要な情報を提供していました。そのため、各部門長は自身の経験や勘を頼りに人事情報を活用し、異動等を検討することがありました。今では、人事部門が保有していた情報をシステム上で一元管理し、誰もが必要な時に確認できる環境整備を完了。今後は、単なる情報管理にとどまらず、将来の経営幹部候補の選定や育成といった事業戦略にも活用していく予定です。

従業員の働き甲斐向上

エンゲージメントサーベイ

概要

2030年ビジョンの非財務目標に掲げた「従業員の働き甲斐(エンゲージメント)の向上」について、「企業理念の浸透」と「従業員の幸せの追求」の2つを柱に取り組んでいます。この方針のもと、社員一人ひとりのウェルビーイング(幸せを感じる状態)の実現に向け、組織および個人の現状を正しく把握・可視化するため、ウェルビーイング・サーベイを実施しました。これらを通じて、中期経営計画に掲げるエンゲージメント向上の実現を目指してまいります。

概要(対象者など)

設問パートと調査目的 ウェルビーイング:
ウェルビーイングそのものの測定
モラール:
ウェルビーイングの前提となる集団の士気を測定
調査対象者と人数
( 2025年3月期)
専門職社員(管理監督者のみ)、
総合職社員 3,263人
(2024年3月期 3,171人)

調査の結果

ウェルビーイング・サーベイ 結果
  • 良好度:高い方が望ましい
  • 注意度:低い方が望ましい
  • モラール:7段階評価で高い方が望ましい

重点施策

当社では、2022年11月より全社的なウェルビーイングサーベイを実施し、その結果に基づき経営層向けのフィードバックセッションを行ってまいりました。サーベイ結果の活用にあたっては、各組織の現状や課題を明確化し、必要な改善策の検討・実行につなげていくことが重要であるという認識を社内で共有しています。特に、サーベイ結果を向上させるためには、単なる施策の実施にとどまらず、「ウェルビーイング向上という活動目的そのもの」を確実に社内へ浸透させることが不可欠と捉えています。
現在、フィードバックセッションの対象は主に経営層に限定されていますが、今後はその範囲を拡大し、現場組織長の階層まで展開していく予定です。これにより、現場レベルでの目的理解と行動変容につなげ、サーベイ結果のさらなる向上を目指します。また、並行してタレントマネジメントシステムの活用を進めており、各組織長が自身の組織のサーベイ結果をタイムリーに把握できる環境づくりを推進しています。これら一連の取り組みにより、組織全体でのウェルビーイング向上を着実に図ってまいります。

人的投資

人材育成

KONOIKEグループでは、職場での実務を通した指導育成(OJT)と自社の3研修センター等でのさまざまな知識習得(OFFJT)を両輪とし、安全・品質の基礎知識から専門性の高い業務知識、経営管理に必要なヒューマンスキル、コンセプチュアルスキルに至るまで、独自の教育体系に基づく教育展開を図っています。
また、2030年に目指す姿として「技術で、人が、高みを目指す」を掲げていますが、お客さまと社会の課題解決を図る「現場のあり方」を今後より一層進化させていきます。そのためにはさまざまな職場において不可欠となる「安全と品質」をベースとしたプロフェッショナルな知識・技術の習得が重要となりますが、現場業務を担う専門職を主たる対象として、鴻池テクノ研修センター(大阪市西淀川区)※1と安全品質研修センター(千葉市中央区)※2の2つの自社センターにて、管理者向け階層別研修、現場管理技術、物流技術、実技系技術、資格取得教育のさらなる充実を図っていきます。そして、サステナビリティを追求していく上で「KONOIKEグループの永続的発展に積極的に貢献し、事業戦略の拡大に向けた広い視野と上場企業として良識のある人材」の育成も重要となりますが、「業務遂行に必要な知識・技能を習得させると共に、優れた創造力や合理的判断力、実行力を有する社員を育成する」という方針に沿って、総合職を対象にKONOIKE GROUP 人材開発センター(豊中市宝山町)※3における年次・階層別・選抜型研修の開催や社外プログラムへの派遣を通し、グループ会社も含めた次世代経営人材の育成を推進しています。

※1:鴻池テクノ研修センター(大阪)

安全・品質などの一般基礎から工程管理知識(5S管理、解析・改善手法、法令など)、請負現場に必要な技術(設備オペレーション、メンテナンス、資格など)を習得。

  • 設備保全実習
    設備保全実習
  • 挟まれ巻き込まれ危険体感教育
    挟まれ巻き込まれ危険体感教育
  • 工具類の定位・定品・定量管理事例
    工具類の定位・定品・定量管理事例
  • 機械保全技能士(電気)受検対策
    機械保全技能士(電気)受検対策

※2:安全品質研修センター(千葉)

国の認定機関としてフォークリフト運転技能講習、運行管理者講習の他、運転者適性診断やフォークリフト運転業務従事者教育を実施。

  • フォークリフト運転技能講習
    フォークリフト運転技能講習
  • 運転者適正診断受診
    運転者適正診断受診

フォークリフト運転の資格取得/運行管理者講習(貨物)
 

※3:KONOIKE GROUP 人材開発センター(大阪)

人材開発センターは、これまで約40年にわたり社員教育の場としていた島屋研修センター(大阪市此花区)を新たな立地に建て替え、グループ全社員を対象に座学研修やワークショップを実施する施設です。研修室を3室から5室に、収容人数・宿泊室数を約2倍に増強したことに加え、災害発生時には本社機能を代替するサテライトオフィスとして使用することも想定してBCP面での懸念を払拭しています。
KONOIKEグループが考える安全で高品質のサービス提供は、ブランドプロミス「期待を超えなければ、仕事ではない」というKONOIKEマインドを持った「人」であるからこそ実現でき、人材育成は事業戦略を支える上で最も注力すべきポイントの一つであると考えています。人材開発センターは、「覚悟をもって挑戦を続け、期待を超え、新しい価値を創造できる学び舎」を基本コンセプトに、KONOIKEグループの人的資本経営を推進する拠点としての役割を担っていきます。

KONOIKE GROUP 人材開発センター
KONOIKE GROUP 人材開発センター 外観

専門職の教育体系図

2025年10月1日
専門職の教育

総合職の教育体系図

2025年10月1日
総合職の教育体系図

グローバル人材の育成

多種多様なグローバル企業、グローバル化を進めるお客さまを支援する上で、グローバル人材の育成は不可欠です。KONOIKEグループは、幅広い知識や教養を備えた人材を育成し、現地の風土、習慣、文化に対する理解を深め、現地に根ざした事業展開を推進します。 そのために、グローバル人材の育成を進めると同時に外国籍や留学生など多様な人材の採用促進を図っています。

KONOIKEグループ統合報告書2025

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