コーポレート・ガバナンス
基本的な考え方
KONOIKEグループは、「『人』と『絆』を大切に、社会の基盤を革新し、新たな価値を創造します」という企業理念を実践していくことにより、誠実に社会的責任を果たし、広く社会から信頼を得て、継続的な企業価値向上を目指すことを重要なミッションと位置づけています。
この考え方に基づき、事業活動を通じて、すべてのステークホルダーと良好な関係を築き、迅速で効率的、健全かつ公正で透明性の高い経営を推進するため、経営の監督機能強化や情報の開示に取り組むなど、適宜必要な施策を実施しています。
体制図
コーポレート・ガバナンス強化のあゆみ
取締役会の構成
取締役会は、経営の監督と執行の分離を明確にするため、取締役5名のうち3名、監査役4名のうち2名は社外役員で構成しています。また、社外役員5名のうち4名は、東京証券取引所の定める独立役員として届け出ています。2019年6月には取締役会の任意の諮問委員会である「人事・報酬委員会」を設置し、コーポレート・ガバナンスのさらなる強化を進めています。
スキルマトリックス
人事・報酬委員会
2024年3月期の活動状況
取締役会の諮問に基づき、計9回の委員会を開催し、取締役・監査役および執行役員の指名・報酬等について審議および答申を行いました。
なお、人事・報酬委員会は、独立社外取締役2名、社外取締役1名、社内取締役1名の合計4名によって構成(2024年3月31日現在)され、独立社外取締役の割合は半数にとどまりますが、独立社外取締役が委員長を務めていることもあり、人事・報酬委員会の独立性・客観性は確保できているものと判断しています。
役員報酬制度
1.基本方針
当社の役員報酬制度は、企業理念である「私たちの使命」(「人」と「絆」を大切に、社会の基盤を革新し、新たな価値を創造します)を実現するため、以下を基本方針としています。
- 企業理念「私たちの使命」の実現に貢献するものであること
- 「2030年ビジョン」の実現に向けた優秀な経営陣の確保・維持に資すること
- 常に期待を超えるというチャレンジ精神を促すものであること
- 業績との連動性が高い設計であること
- 中長期的な株価連動報酬を継続すること
- 従業員・株主をはじめとしたステークホルダーに対して、説明責任を果たせる透明性・公正性が担保された設計であること
2.決定方法
各取締役の報酬額については、人事・報酬委員会の答申を踏まえ取締役会により、各監査役の報酬額については、監査役間の協議により決定しています。具体的金額については、株主総会で決議いただいた報酬限度額に基づき、会社業績、他社水準および従業員給与等を考慮しています。
区分 | 報酬等の総額(百万円) | 報酬等の種類別の総額(百万円) | 対象となる役員の員数 | ||
---|---|---|---|---|---|
基本報酬 | 業績連動報酬等(賞与) | 非金銭報酬等(譲渡制限付株式) | |||
取締役 | 188 | 105 | 65 | 17 | 5名 |
(うち社外取締役) | (37) | (37) | (ー) | (ー) | (3名) |
監査役 | 70 | 70 | ー | ー | 4名 |
(うち社外監査役) | (22) | (22) | (ー) | (ー) | (2名) |
合計 | 258 | 175 | 65 | 17 | 9名 |
(うち社外役員) | (59) | (59) | (ー) | (ー) | (5名) |
- 取締役の報酬等の額には、使用人兼務取締役の使用人分給与は含まれていません。
取締役会の実効性評価
持続的な企業価値向上のため、2016年3月期から、取締役会の構成や運営、議論の内容やサポート体制などの評価を年 1回実施し、取締役会の機能強化を図っています。
評価の方法
評価主体 | 各取締役・監査役による自己評価 |
---|---|
評価手法 | アンケート方式 |
回答方式 | 記名式 |
評価項目 | 以下の項目についての評価および自由意見
|
評価プロセス
- 全取締役・監査役によるアンケート
- 事務局による集計
- アンケート結果を踏まえた取締役会の自己評価
- 評価結果に基づく検討
2024年3月期の評価結果の概要
取締役会の構成は、全体の員数や社内・社外取締役の員数のバランスは適切と評価されています。
運営面については、審議・討議・報告の時間設定は改善が図られていると評価された⼀⽅ 、⻑期戦略や経営課題に関する議論の時間をさらに増やすべきなどの意⾒がありました。
東証からの要請「資本コストや株価を意識した経営」に関連し、取締役会において市場評価が低迷している要因について、分析・評価や改善に向けた⽬標および具体的な取り組みなどの検討が不⾜していると評価されています。
今後の対応
上記の結果を踏まえ、以下の事項などについて改善を検討していきます。
- 取締役会における戦略に関する議論の充実
- 取締役会における活発な討議、意⾒交換や議論の質向上に向けた取り組みの継続
- 取締役会実効性評価の⽅法について、より客観的な視点を⼊れた評価⽅法の検討
取締役会の2024年3月期の活動実績
主な議案
2024年3月期は、取締役会を18回開催しました。主な議案は、以下の通りです。
- 諸規程の制定・改廃
- 組織機構の改正
- 重要な事業計画
- M&A等に関する事項
- 株主総会に関する事項(例:株主総会付議議案の決定)
- 株式に関する事項
- 開示(会社情報の公表)
- 建物・構築物、土地等の購入、賃貸借など(例:新規拠点の設立に関するもの)
- 執行役員の選任
- 財務に関する事項(例:長期借入金、短期借入金に関するもの)
- 関係会社に関する事項
- その他経営に関する重要な事項
主な討議内容
2023年5月度の取締役会にて、取締役会の実効性に関するアンケート結果について討議しました。その場において、今後の取締役会で、経営に関わる重要な課題について、討議のテーマを設定しました。
- 経営指標のモニタリングについて
当社グループでは中期経営計画(2023年3月期~2025年3月期)において、財務目標として売上高3,320憶円、営業利益160億円、ROE8%、非財務目標として環境面ではCO2排出量20%削減(2019年3月期比)、人に関しては経営戦略に基づく人材育成の推進、従業員の働き甲斐(エンゲージメント)の向上、技術に関しては、技術革新・DXによる自動化・省力化、労働環境改善による「安全」の絶えざる追求を掲げています。
企業価値向上のために、経営計画を分析し、成長性、資本生産性、資本コストの観点からブレイクダウンを実施。さらにESGファクターとして環境、人、技術を重視し、達成に向けて経営指標を適宜見直し、定期的に実績確認がなされています。
こうした取り組みにより、持続的な成長と企業価値の最大化を目指しています。
- 非財務目標(人、技術)について
当社グループでは、持続的な企業価値の向上のために、非財務資本への投資の重要性を強く認識しています。
当社の事業構造から人的資本の強化が価値創造の重要なドライバーであると捉えています。人材を単に「コスト」としてではなく、価値を創造する重要な「資本」として位置づけ、経営戦略と人事政策、人材育成の結びつきを不可分と考えています。
事業戦略に最適な人材獲得・育成計画、戦略的で柔軟な人材配置、教育訓練や処遇改善などの施策を積極的に講じ、持続的な企業価値の向上に取り組んでいます。
また2030年ビジョンで掲げる「技術で、人が、高みを目指す」の実現に向けて、技術革新・DXによる自動化、省力化と労働環境改善による安全の追求を続けています。当社グループの技術資本は、新技術やデジタル技術だけでなく、従業員や現場のアナログ技術(改善活動、安全な環境づくり、品質など)を含む幅広い無形資産と位置づけています。匠の暗黙知を共有資産化し、変化対応力を強化、安全・安心の水準を高め次世代の事業創出力を強化、サステナブルな社会基盤創造への革新を目指します。「人」と「技術」は競争力と価値創造の源泉であり、新技術を活用して現場の安全確保と改善を進め、創造性を高める働き方を実現します。
- 株主、投資家との対話結果に関する討議について
当社グループは、IR活動のPDCAサイクルの一環として、投資家視点から経営を見直すIRフィードバックを実施し、継続的に討議を行っています。物流業界で評価されている先駆的な取り組みとして、ROIC(投下資本利益率)経営の深化と進化を推進し、資本効率を意識した経営を進めています。
また、人的資本・技術資本経営やダイバーシティといった非財務資本の強化についても、投資家とのエンゲージメントで得た重要な検討ポイントを共有しています。
これらの取り組みで得られた知見を経営に反映させ、当社グループの変革と企業価値の向上に役立てています。
- 投資のモニタリング結果に関する討議について
当社グループは、中期経営計画の財務方針として「成長に向けた規律ある投資、企業価値の持続的向上、安定的な株主還元」を掲げています。取締役会では、直近4事業年度に開始した新規投資案件の利益進捗状況を確認し、過去の投資案件の業績も把握しながら、今後の取り組みの方向性について討議しています。特に、当初の事業計画から大幅に乖離した案件については多くの議論が交わされ、戦略の文脈から捉え直す必要性や資本コストのあり方、投資基準の設定など多角的な議論が行われました。これにより、投資PDCAサイクルの改善点が見出され、取締役会では利益進捗状況のモニタリングと事業戦略との整合性について継続的に討議しています。
- 次世代プロジェクトについて
「次世代プロジェクト」は、2030年ビジョン「技術で、人が、高みを目指す」の一環で発足しました。このプロジェクトの主な目的は、データの活用によって物流現場の改善活動や意思決定を補助できるような、ソフトウェアを中心としたソリューションを開発し、外販・内部活用することです。プロジェクトはドイツと日本で推進されており、欧州のソフトウェアエンジニアリング会社とソリューションの核となるソフトウェア開発を進めています。このプロジェクトの活動は、取締役会で定期的に報告され、社外取締役や社外監査役からはポイントを押さえた指摘がなされ、アドバイスやフィードバックを受けながら進展しています。
後継者育成
KONOIKEグループでは人材育成を持続的成長の柱と位置づけています。社長および取締役(執行役員兼務)と各本部長(執行役員級)は、月1回の本部長定例会議で業務執行についての情報共有を行っています。各本部長は、取締役との議論・対話を通じて、経営者の視点の涵養に努めています。また、人材基盤のさらなる強化に向けた取り組みの一環として、必要に応じて議論の場を設定し、KONOIKEグループの戦略や理念などについて意見を交わし、新規事業へのチャレンジや既存事業の拡大意欲を喚起しています。その他、本社部室長・支店長などの次世代経営者層は、日常業務の中で、相互の信頼関係を構築しています。次世代経営者層以上を対象とした社内セミナーにより、企業理念や行動指針の共有を図り、経営上必要な経験やノウハウを、世代間で途切れることなく継承しています。
政策保有株式
1.基本方針
当社は、さまざまな分野において、パートナーシップを重視した事業活動を展開していることから、事業上重要なお客さまとの間の取引関係の維持・強化等により、中長期的な企業価値向上を図るため、政策的に株式を保有することがあります。
なお、個別の政策保有株式については、毎年、取締役会において、保有に伴う便益やリスクが資本コストに見合っているか等、定期的に保有の適否を検証しています。検証の結果、保有の合理性が認められなくなったと判断される株式については売却を行い、縮減を図っています。
2.議決権行使基準
当社は、政策保有株式に係る議決権行使については、画一的に賛否を判断せず、発行会社の持続的な成長や中長期的な企業価値の向上につながるかどうかなどの観点から、議案ごとに検討し判断しています。なお、当社は、株主価値を毀損するような議案については、肯定的な議決権の行使を行いません。
政策保有株式の縮減状況
リスクマネジメント
リスクマネジメントに対する基本方針
KONOIKEグループでは、企業経営に重要な影響を及ぼすリスクを低減させるとともに、非常事態が万が一発生した場合に、迅速かつ的確な対応ができる危機管理体制の確立を目的として「リスクマネジメント規程」および「危機管理基準」をKONOIKEグループの基本方針として制定しています。
リスク管理体制
KONOIKEグループでは、前述の「リスクマネジメント規程」を基に、企業価値を毀損させる可能性のある懸念事項をリスクとして捉え、次のように定義しています。
- 戦略的意思決定によりKONOIKEグループの成長およびサステナビリティを巡る課題の解決を図り、将来に向け企業価値を向上させるにあたり、これを阻害するリスク
- 法令遵守や経営課題への取り組み不足他、既存の事業活動や業務運営の健全な展開を阻害し、現在の企業価値を毀損させるリスク
これらのリスクに対しては、“予防と抑制”に重点を置いた管理を行い、事故やトラブルを未然に防ぐとともに社会責任を果たし、現在の企業価値の維持ならびに将来の企業価値向上に努めています。
運用については、リスクマネジメント担当を部会長とするリスクマネジメント部会を四半期ごとに開催しており、リスクマップに基づき選定される優先対策リスクを中心にリスク対策の確認や取り組み状況のモニタリングを実施するなど、リスク低減に向けた活動を行っています。
危機管理体制
社内外の事象に起因し、突発的もしくは管理不十分により生じたKONOIKEグループの存続および事業継続を脅かす事態をクライシス(危機)と捉え、それらが顕在化した場合の緊急対応、復旧活動、さらには有事下での事業継続活動を包括してクライシスマネジメント(危機管理)と定義しています。前述の「危機管理基準」を定めるほか、自然災害に備えて各種マニュアルを常備するなど、発生した事象に対して適切かつ迅速に対応できる体制を構築しています。
巨大地震やパンデミック等、大規模自然災害により事業継続が困難になるなど、リスクが顕在化した際には、代表取締役会長兼社長執行役員をトップとして、危機管理委員会を招集し、非常事態と判断した場合は、対策本部を設置して危機の対処に当たります。体制の構築だけでなく、対策本部設置訓練や安否確認訓練などにより対応力強化にも努め、被害を最小限に抑えられるように取り組んでいます。またKONOIKEグループでは、これまでも地震や台風等の自然災害発生時に、物流、医療、空港業務などを通じて社会インフラの緊急支援対応に取り組み、緊急時対応の経験を重ねてきました。これらの知見をもとに、災害時における被災地の支援にも積極的に貢献していきたいと考えています。
KONOIKEグループにおけるリスクアセスメント
KONOIKEグループでは、リスクアセスメントをリスク管理のプロセスの第一歩と捉え、分析・評価を中心としたリスクの現状把握を行っています。
この取り組みは、対策の検討や優先順位づけ等の意思決定を行うための基礎的なデータの収集を目的として実施し、リスク管理において重要なプロセスに位置づけられます。リスクアセスメントは、サステナビリティ委員会の傘下のリスクマネジメント部会が中心となり実施します。リスクアセスメントにおいて特定された優先対策リスクについては、所管部門を決定し、所管部門が中心となり、具体的な対策の実行・改善を行います。
リスクマネジメント部会は、所管部門における取り組み状況をモニタリングする役割を担います。