経営方針

2030年ビジョン・中期経営計画(2023年3月期~2025年3月期)の詳細につきましては、新中期経営計画説明資料をご覧ください。

1.会社の経営の基本方針

当社グループが、革新を続け持続的成長を果たすために、企業理念を「『人』と『絆』を大切に、社会の基盤を革新し、新たな価値を創造します」とし、当社グループが長い歴史の中で築いてきた信頼と信用、その根幹をなすすべてのサービスの安全・品質に込める強い想いと誇りを示しております。そして、その使命を果たすことを皆様にお約束するために、ブランドメッセージを「私たちの約束:期待を超えなければ、仕事ではない」とし、その「私たちの約束」を具現化するため、全従業員の行動指針として「私たちの覚悟」を定めております。

体系図
また、2022年5月には、2030年ビジョンとして「技術で、人が、高みを目指す」と定めました。事業環境が大きく変化し、将来の予測が難しい時代にあっても、当社グループの永続的な企業価値の向上には人の成長が不可欠であることに変わりありません。一人ひとりが能力を磨き、真価を遺憾なく発揮できる環境を整えると同時に、当社グループの現場に長年蓄積されたノウハウをはじめとする有形・無形の財産である幅広い技術を活用し、業務改善・改革に取り組み、その過程で従業員一人ひとりが成長する。このような循環を作りだしてまいりたいと考えております。
そして、「高み」を目指すための3つの指針を下記の通り示し、これらを具現化していくことにより、2030年ビジョンを実現してまいります。

KONOIKEグループが2030年に目指す姿

技術で、人が、高みを目指す

先端テクノロジーを使いこなす次世代KONOIKEスピリットで、
お客さまと社会の課題解決を図る「現場のあり方」を進化させていきます。

「高みを目指す」とは…

  • 新技術を活用し、現場の更なる安全確保と改善・工夫を進め、一人ひとりの創造性を高める豊かな働き方を実現していく。
  • 匠の“暗黙知”を、みんなが使えるグループ共通資産という“強み”に変えていき、変化対応力のDNAに磨きをかけていく。
  • 安全・安心の水準を高め、次世代の事業創出力を強化し、サステナブルな社会基盤創造へさらなる革新を実現していく。
  • 技術とは、新技術・DX等のデジタル技術と従業員個人や現場にあるアナログ技術(改善活動、安全な環境づくり、品質など)との組み合わせを含む幅広い「無形資産」を指す

なお、2030年ビジョンの財務目標は下表の通り、営業利益250億円、ROE10%以上を重視し、売上高4,500億円は実現に向けたガイドラインと位置付けております。これは、売上高に偏った成長を追うのではなく、幅広い技術の活用をはじめとした創意工夫により、お客様や社会の困りごとを解決し、高い利益成長を図っていくことを意図しております。加えて、サステナビリティの観点から新たに「環境」「人」「技術」の非財務目標を掲げました。
従業員全員が新たな2030年ビジョンを共有し、一人ひとりが成長意欲を持ち、活躍できる風土づくりを進め、目標達成に邁進してまいります。

2030年ビジョン[2031年3月期経営目標]

財務目標 売上高※ 4,500億円
営業利益 250億円
ROE 10%以上
非財務目標 環境 CO2排出量35%削減(2019年3月期比)
経営戦略に基づく人材育成の推進
従業員の働き甲斐(エンゲージメント)の向上
技術 技術革新・DXによる自動化・省力化
労働環境改善による「安全」の絶えざる追求
  • 売上高はガイドラインとする。

2.中期的な会社の経営戦略・対処すべき課題

2023年3月期の当社を取り巻く環境は、新型コロナウイルスの影響が徐々に緩和し、経済活動の正常化が進む一方で、2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻の長期化によるエネルギー価格の上昇や諸外国のインフレ進行と円安による輸入価格上昇を主とした物価高で消費が減退する等、厳しい経営環境のもと推移いたしました。しかしながら、継続した適正単価の収受や効率化の取り組み、部門間連携による事業間シナジーの創出等により、空港関連が依然として厳しいなかにおいても、売上高は3,118億円、営業利益132億円、ROE7.1%となりました。
当社グループでは2030年ビジョンの実現に向け、2023年3月期~2025年3月期までを対象期間とする中期経営計画を進めており、初年度としては、一定の成果が見られたものと捉えております。しかしながら、事業環境が大きく変化し、将来の予測が難しい時代にあって、従来の延長線上の取り組みのみでは2030年ビジョンの実現は容易ではありません。また、2024年4月より適用されるドライバー・建設業の時間外労働時間の上限規制適用等もあり、人手不足という課題は、中長期的な国内生産年齢人口の減少等と相まってさらに深刻化するものと考えております。また、AI、IoT、ビッグデータ、ロボットの活用に代表される技術革新の進展により長期的にあらゆる業界において自動化・省人化が進んでいくと考えられ、当社グループの業務においても新技術を取り入れながら業務を改革・革新することが急務であると捉えております。このような課題に対し、当社グループはこれらを脅威ではなく機会として捉え、新たな領域拡大に繋げることが不可欠と考えております。
そのため、中期経営計画では、「人と技術のシナジーで時代とともに変化する『期待を超える価値』を創造しよう」という基本方針を定め、当社グループの強みである人と、現場でのノウハウや新技術の活用により、さらなる収益力伸長、企業価値の向上を実現すべく、次の4つの重点事項を定めました。これらの取り組みを引き続き進め、中期経営計画の確実な達成を目指します。

重点事項

[1]革新への挑戦

  • 注力事業における挑戦(含M&A)
  • 技術の活用とDX並びに協業による挑戦
  • 人的資本強化

[2]安全・安心の追求

  • より安全・安心な職場環境・社会の実現
  • 安全人づくり

[3]サステナビリティの追求

  • 全員参加で豊かな社会の実現

[4]収益力の向上

  • 革新への挑戦による収益性・効率性の向上
  • 収益の改善継続

主要目標と進捗

中期経営計画では、従来の売上高・営業利益といった事業規模や成長性を示す指標、自己資本当期純利益率(ROE)といった資本効率性を示す指標に加えて、2030年ビジョンと同様に「環境」「人」「技術」といった非財務目標を掲げ、進捗をモニタリングしております。

2023年3月期
(実績)
2024年3月期
(予想)
財務目標 売上高 3,118億円 3,210億円
営業利益 132億円 140億円
ROE 7.1% 6.9%
非財務目標 環境 164,924t-CO2
(2019年3月期比 CO2排出量17%削減)
174,439t-CO2
(2019年3月期比 CO2排出量12%削減)
  • タレントマネジメントシステム導入による人材情報の可視化
  • 外部調査機関を通じたエンゲージメントサーベイの実施
  • 注力事業への人材配分の実現と経営人材育成制度の始動
  • 戦略委員会との連携による人材戦略策定
  • エンゲージメントサーベイスコアの向上
技術
  1. 1.新技術導入による現場改善

①現場への技術導入実績件数:19件

②現場への技術導入に向けたPoC件数:55件

③技研ICでの技術検証件数:13件

2.デジタル技術を活用した現場改善

①新統合WMS導入実績件数:1件

②事業現場業務の生産性向上実績件数:7件

③MOVE導入実績件数:3件

3.全社改善活動の推進

①本社安全品質活動報告会事例件数:8件

②支店安全品質活動報告会件数:79件

③コーポレート部門改善報告会事例件数:6件

1.新技術導入による現場改善

①現場への技術導入実績件数:25件

②現場への技術導入に向けたPoC件数:35件

③技研ICでの技術検証件数:12件

2.デジタル技術を活用した現場改善

①新統合WMS導入実績件数:4件

②事業現場業務の生産性向上実績件数:10件

③MOVE導入実績件数:5件

3.全社改善活動の推進
(①②③とも継続指標)
 
2025年3月期
(計画)
財務目標 売上高 3,320億円
営業利益 160億円
ROE 8.0%
非財務目標 環境 CO2排出量20%削減(2019年3月期比)
  • 経営戦略に基づく人材育成の推進
  • 従業員の働き甲斐(エンゲージメント)の向上
技術
  • 技術革新・DXによる自動化・省力化
  • 労働環境改善による「安全」の絶えざる追求

財務方針

中期経営計画においては、2030年ビジョンの達成と企業価値の持続的な向上を目指し、成長投資に加え、技術革新・DX投資、M&A、荷役機器更新等の一定の投資が必要と考えておりますが、投資判断にあたっては、資本コストを踏まえたNPVとROICを基準に審議を行った上で、戦略との整合性を勘案し判断しております。
投資枠としては、営業CF450~500億円(3ヵ年累計)を前提にその枠内での設備投資・M&A・株主還元を計画しております。
また、財務規律については、投資余力・最適資本構成・株主還元余力のバランスを考慮した以下の各項目を維持し、財務健全性を確保してまいります。

  • DEレシオ0.8倍以下
  • 自己資本比率40%以上
  • 格付けA-以上


株主還元については、下記の方針により、安定的な株主還元を目指してまいります。

  • 2023年3月期は1株当たり配当金水準(年36円)に復帰
  • 以降は原則その水準の維持向上に努める
  • 事業環境及び財務状況に応じ機動的な自己株式取得も今後検討の選択肢とする

なお、2023年3月期の1株当たり年間配当金につきましては、2022年3月期対比で13円増額の1株当たり42円とさせていただきました。今後も創出したキャッシュは、財務規律を維持する前提のもと、将来に向けた成長投資に振り向けるとともに、安定配当と収益拡大による増配を目指すことで株主還元の充実を実現してまいります。

(収益力向上に向けた取り組み)

これまで当社グループは業界ごとに事業部門が分かれ、お客さま第一の体制を敷いてまいりました。お客さまからの信頼醸成、深耕化等に強みを発揮する一方、事業間のシナジーを十分に発揮出来ていないこと等、課題もありました。このような中、コロナ禍を乗り越える過程で多くの部門間連携が進み、収益改善はもとより多くの学びを得て、改めて部門間連携の重要性を認識いたしました。今後はこれまで以上に、お客さまの成長や社会の発展に貢献できるよう、業界やお客さまの枠を越えて、技術やノウハウの共有をはじめ事業の横串を通し、より付加価値の高いサービスを提供してまいりたいと考えております。
そのため、2023年4月より取締役会の諮問委員会として、新たに請負並びにロジスティクスの戦略委員会を立ち上げました。既存事業の延長線上だけでなく、中長期的な環境変化を見据えたうえで請負並びにロジスティクスの将来像を描き、限られた経営資源をどのように配分していくかを検討してまいります。この取り組みにより、付加価値の高いサービスの提供や新たなビジネスの獲得による利益率の向上にも努めてまいります。
また、合わせて規模・地域・業種を勘案し、現在18ある支店を11支店とする再編を実施しました。この再編により、現場力をはじめとする支店運営力を高めると同時に、より機動的な判断と一事業にとらわれない全体最適の視点で事業を運営してまいります。

(資本効率向上に向けた取り組み)

持続的な発展のためには、限られた経営資源を効率的に活用することが不可欠です。当社グループは、資本効率の向上を図るため、ROICを活用し、資本コストを意識した経営に取り組んでおります。取り組みにあたっては、全事業を基盤事業、改善事業、注力事業の3つに分類し、各事業の位置づけに応じた戦略の立案・実行・見直しを進めるとともに、全社最適の観点から事業ポートフォリオの見直しを進めてまいります。そして、実効性を高めるために、投資回収に関しては投資判断から投資後モニタリングにいたる仕組みを強化し、半期ごとの取締役会への報告と戦略の見直しを行い、確実な投資回収を行うよう取り組みを行っております。また、前中期経営計画より継続している不採算事業の収益改善(投下資本10億円以上の大規模拠点について、ROICの視点で対象を選定)については、引き続き取り組みを進めております。2023年2月には埼玉県越谷市に冷凍・冷蔵倉庫を開設し、近郊の定温流通センター3拠点の業務をお客さまの業種・業態に応じて再編することで、定温物流サービスを強化し収益改善を進めております。足下では電気代等の高騰により、計画策定時点と比較し、コスト高とはなっておりますが、計画達成に向け着実に取り組みを進めてまいります。
このような取り組みにより、2023年3月期のROICは4.3%となり、前連結会計年度比0.9ポイントの向上となりました。引き続き2025年3月期での5%達成に向け取り組みを進めてまいります。

当社グループの事業ポートフォリオ

分類 分野
基盤事業 鉄鋼関連、食品(食品)関連、食品プロダクツ関連、生活(生活)関連
改善事業 生活(物流)関連、食品(定温)関連、国際関連
注力事業 空港関連、エンジニアリング関連、メディカル関連、インド事業
  • 2024年3月期より環境・エンジニアリング関連をエンジニアリング関連に名称変更いたします。

(空港関連と鉄鋼関連の取り組み)

当社グループは、多様な企業との取引により事業リスクの分散を図り、特定企業又は業種の業況変動等による影響を低減するよう努めておりますが、依然としてコロナ影響が顕著な空港関連、業界の構造変化による影響が大きい鉄鋼関連については、特に重要課題であると認識し、それぞれ下記の通り取り組みを進めております。

① 空港関連の見通しと対応

2023年3月期につきましては、2022年10月以降水際対策の緩和もあり、徐々に回復傾向にありましたが、当社の空港毎のサービス内容を勘案すると、アジア太平洋、特に中国便の回復状況の影響を受けやすいため、低水準で推移いたしました。しかしながら、すでに日本を含め各国の入国制限の緩和も進んでおり、2024年3月期につきましては、より一層の復便が進み、日本全体での国際旅客便就航率の回復状況をコロナ前の2019年と比較して年平均60%と見込み、予想を策定しております。そのようななかで、回復傾向にある需要に対応するため、2020年より継続しておりました社内外への応援・出向に関しては、原則2023年3月末までとし、順次帰任のうえ教育を進めております。そのため、復便状況いかんにより教育実施等に伴う一時的なコストの先行や作業効率の悪化による収益改善の鈍化がみられることが考えられますが、今後急激に回復する需要を取りこぼすことなく応え続ける体制を構築することは、サービス提供領域の拡大や新たな国内・海外空港への進出に向けた重要な布石であると考えております。
また、2023年4月より空港関連の国内関係会社11社をホールディングス化し、営業力の強化と空港プロフェッショナル人材の育成を図ることで、2030年に向け成長を加速させてまいります。加えて、恒久的な人手不足への対応、DXの推進、脱炭素等の課題解決も併せて行ってまいります。

② 鉄鋼関連の見通しと対応

鉄鋼関連においては、2021年の和歌山第1高炉休止に続き、鹿島第3高炉が2025年3月期末をめどに休止予定となっており、この影響は、徐々に顕在化し、大きくは2026年3月期に顕在化するものと見込んでおります。これに対し、鹿島第3高炉休止を見据えた準備と休止までの安定操業の完遂という両面で対応を進めております。具体的には、休止前後の生産体制に応じた要員の適正配置、それに向けた資格の取得や、当社グループ各部門との連携強化による新規・深耕化を進めております。加えて、DX推進やドローン活用による作業の効率化等の取り組みを進め、顧客への提供サービスをより高度化することでパートナーシップを強化してまいります。

(環境に関する取り組み)

当社グループでは、CO2排出量を2031年3月期までに35%削減、2050年にはカーボンニュートラルの実現を目標に掲げております。そのようななかで、中期経営計画の最終年度2025年3月期には20%の削減を目標に掲げ、自社契約電力の再生可能エネルギー由来の電力100%導入並びに省資源・省エネルギー化に取り組んでおり、2023年3月期末では、17%の削減となっております。引き続き、上記取り組みを進めると同時に、事業活動を通じた環境負荷低減が実現できるよう、新技術の導入や生産性の向上にも取り組んでまいります。
また、Scope3については、今後集計・目標設定に向けて取り組んでまいります。

  • 削減目標はすべて2019年3月期比。対象範囲は単体及び国内連結会社のScope1.2

(人に関する取り組み)

当社グループの強みの源泉である「人」の成長こそが、持続的な企業価値向上を実現するうえで不可欠であると考えております。2030年ビジョンでは、教育・訓練等、人への投資を通じ、人の能力を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげていこうとする「人的資本経営」に取り組んでおります。この中期経営計画においては、経営戦略に基づく人材育成を推進するとともに、生産性と相関関係にあるエンゲージメント向上の取り組みを進めております。2023年3月期には社員一人ひとりのウェルビーイング(幸せを感じる状態)の実現に向けて、当社の現在のありのままの姿を可視化するため、ウェルビーイング・サーベイを初めて実施いたしました。今後も継続的なウェルビーイング・サーベイの実施により、課題を抽出し、課題に応じた施策の実行により、PDCAを構築し、人的資本をより強化してまいります。
また、人権問題についても、新たに人権方針を定め、今後はこの方針に基づきながら、ビジネスパートナーと一体になって取り組みを進めてまいります。

(技術に関する取り組み)

2030年ビジョンでも示している通り、当社グループの価値の源泉である「人」が、さらなる付加価値を生み出すカギは「技術」であると考えております。この「技術」は新技術・DX等のデジタル技術と従業員個人や現場にあるアナログ技術(改善活動、安全な環境づくり、品質等)との組み合わせを含む幅広い「無形資産」であると定義しております。
そのため、中期経営計画では「新技術による現場革新」「DXによる事業革新」「新技術による安全性向上」の強化を進めております。属人的になりがちな経験、知恵、ノウハウの共有化を進めると同時に、今後は新技術やDXを活用することで、当社ならではのサービス提供を目指しております。具体的には、「技術」を社内で容易に水平展開できるよう、実際に各現場で導入された事例、あるいはその効果を「技術ライブラリー」で見える化し、全ての従業員が新しいアイデアの創出に活用することで、付加価値創出を強化してまいります。

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