経営方針、経営環境及び対処すべき課題等

1.会社の経営の基本方針

当社グループは、この先の100年も存在価値のある企業として成長し続けていくために、ブランド価値の強化・確立を目指す取り組みを開始しました。その過程で、これまでの経営理念・行動指針などブランド価値を構成する要素の整理・再構築を行い、「私たちのブランド」として2018年5月に策定しました。そして、当社グループが長い歴史の中で築いてきた、すべてのサービスの安全・品質に込める強い想いと誇りを「私たちの約束=期待を超えなければ、仕事ではない」という言葉にまとめました。これは「私たちのブランド」を象徴する社会の皆様と当社グループの約束の言葉です。そして、その約束を果たし続けるために当社グループが目指すべき姿、存在意義を不変の「企業理念」として新たに定義し、その実現のための「行動指針」を策定しました。

企業理念「私たちの使命」
「人」と「絆」を大切に、社会の基盤を革新し、新たな価値を創造します
行動指針「私たちの覚悟」
人 |命を守る覚悟は、あるか
仕事|情熱を、燃やしているか
自分|昨日を、超えているか

2.経営環境及び「2030年ビジョン」

当社グループでは、特に中長期的に対処するべき環境変化として、国内生産年齢人口の減少による「人手不足の深刻化」とAI(人工知能)、IoT、ビッグデータ、ロボットの活用に代表される「技術革新の進展」という2つの潮流を認識しております。このような環境変化は、長期的に当社グループの事業の前提を大きく変容させるものであると認識しており、脅威としてではなくいかに機会として捉えていくかが重要な経営課題であると認識しております。
「人手不足の深刻化」に対しては、足元では積極的な人材採用活動等により事業継続への影響を最小限に抑えていますが、中長期的には生産性の向上によって根本的に解決を図る必要があります。また、AI、IoT、ロボットなど様々な「技術革新」が進む中で、当社グループの業務も、長期的には自動化・機械化が進んでいくと考えられ、新技術を取り入れながら業務を革新することが求められます。
創業150周年となる2030年、さらにその先の未来に向けて当社グループがお客様や社会から信頼され、選ばれ続けていくためには、上記の企業理念の実現を常に追い求めつつ、中長期的な経営環境の変化に対して事業のあり方を柔軟に変化させていくことが求められます。そして、経営環境の変化の潮流をとらえた変革を進めていくために、2030年に目指すべき経営の姿として「2030年ビジョン」を定めています。

2030年ビジョン[2030年定量目標]
事業ポートフォリオ 10事業本部以上をめざし事業の多角化
売上高 3,500億円~5,000億円
物流売上高:サービス売上高(※) 40:60
国内売上高:海外売上高 80:20
営業利益率 5%以上
ROE 10%以上
  • (※)サービス売上高:複合ソリューション事業における請負業務、エンジニアリング業務など、純粋な物流業務以外の業務の売上高

3.中期経営計画と対処すべき課題

2030年ビジョンを踏まえ、2019年3月期~2021年3月期を対象とした中期経営計画の3カ年を「2030年ビジョン実現に向けた『確固たる基盤づくり』の期間」と位置づけ、以下の事項に取り組んでおります。

[1]意識改革への取り組み

「人手不足の深刻化」と「技術革新の進展」という2つの潮流に対処するには、これまでの当社グループの経営と事業のあり方を、グループ一体となって見直すことが不可欠です。その一体感の醸成のためには、当社グループの従業員一人ひとりが共通の使命感・志を持ち、誇りをもって働けるブランド力を有していることが重要であると捉えており、全従業員に対し「企業理念」と「行動指針」を常に意識し実践することを求め、「私たちのブランド」の社内浸透施策を推進しております。
「私たちのブランド」は、これまでの当社グループの139年の歴史の中で共有され、育まれてきた不変の理念や価値観を改めて明文化したものです。「私たちのブランド」を経営の軸として、これまでの経営と事業のあり方について2030年に向けたあるべき姿へと見直しを図ります。

[2]基盤づくりに向けた取り組み

  • 1.将来を見据えた事業基盤の充実

    「2030年ビジョン」に向けた変革を進めていくには、将来を見据えた事業基盤の充実を図ることが喫緊の課題と認識しております。特に、以下の点に積極的に取り組みます。

    • 人材の採用・育成活動などによる人材基盤の強化
    • システム化投資・自動化投資や本社業務プロセスの見直しを通じた生産性の向上
    • 安全衛生・品質管理レベルの妥協のない改善

    人材基盤の強化に関しては、業界全体で人手不足が深刻な課題となっている中、当社グループは積極的に採用活動に取り組み、全体として当面の業務運営には支障をきたさない程度に人材を確保しております。今後も、積極的な採用活動を継続するとともに、人材定着率の向上に取り組みます。そのために「やりがい」と「ゆとり」を両立できる職場づくり、多様な価値観(ダイバーシティ)が受け入れられる職場づくりを推進します。外国人技能実習生の受け入れ拡大や外国人総合職採用の開始に伴い、ダイバーシティの取り組みの重要性はさらに増していることから、2019年4月よりダイバーシティ推進部を設置しました。また、事業戦略の遂行を支える、多様な人材の育成への取り組みも強化します。空港事業においては、成田航空ビジネス専門学校を傘下に置き、空港業界全体の人材育成に貢献しております。このように、当社グループのニーズだけでなく社会ニーズにも対応した広い視野での人材育成にも取り組んでおります。
    生産性の向上に関しては、ICT推進本部や2019年3月期に設立した情報システム開発子会社であるコウノイケITソリューションズ㈱が中心となり、全社的なシステムの見直し及び再構築に着手しております。各現場の物流システムの統合化・共通化や経営情報システムの整備を通じて、生産性と効率性の向上を図ります。また、各現場においても、自動化・省力化のための設備投資を進めております。本社部門においても、部門横断的な業務プロセスの見える化と見直しを通じて、業務の生産性及び付加価値向上に取り組んでおります。
    さらに、当社グループがお客様に提供する価値の中でも特に重要な要素である安全衛生・品質管理に関して妥協なくさらなる向上を追求します。安全衛生・品質管理に関する事項を統轄する経営品質本部長は、主力事業本部の1つにおいて副本部長を兼任することとし、また、各支店には安全品質を担当する専任者を置き、営業現場と本社が同じ目線でより一体となって取り組みを進められるよう組織体制を見直しました。本社間接部門にも当事者意識を持たせ、安全衛生・品質管理を当社グループのサービスの根幹として全社的に磨きをかけていくことが今後の課題であります。

  • 2.経営基盤の再構築

    「2030年ビジョン」に向けた企業経営を促進する経営基盤を再構築してまいります。その一環として、経営の健全性及びコーポレート・ガバナンス体制の一層の強化を図るべく、2019年6月に開催した第79回定時株主総会において社外取締役をさらに1名選任して3名体制としました。
    また、当社グループの事業運営状況を多面的に把握するために、ROIC(投下資本利益率)を経営指標に追加するなど管理会計制度の再整備にも取り組んでいます。2019年3月期は、中長期的に取り組むべき戦略目標を明確にするために事業本部別のKPI(重要業績評価指標)の設定に取り組みました。今後も企業価値向上に向けた意思決定に資する仕組みの整備・運用に取り組みます。

  • 3.資本コストをさらに意識した経営への取り組み

    当社グループの持続的な発展のためには、限られた経営資源を効率的に活用することが不可欠です。事業の生産性・持続可能性を測る指標としてROICを活用し、資本コストを意識した事業運営に取り組んでまいります。2019年3月期は、各事業を基盤事業、収益改善事業、成長事業の3つの事業群に分類し、各事業の位置づけを明確にしました。今後は、それぞれの事業の位置づけに応じた戦略の立案・実行・見直しを進めるとともに、全社最適の観点から資源配分を行う仕組みの構築に取り組みます。

  • 4.部門の垣根を越えた成長の促進

    お客様に当社グループを選び続けていただくには、各事業本部単位で完結するサービスに終始するのではなく、部門の垣根を越えて、当社グループ全体でお客様にソリューションを提供することがますます重要になると認識しております。営業本部を中心に、当社グループ内での連携をさらに強化します。
    また、2019年4月より、インド統括本部を発足させました。従来、海外事業本部とメディカル事業本部にまたがっていたインド事業を1つの本部に括り直し、同本部を中心に他の国内事業のインド展開の可能性も模索します。これも部門の垣根を越えた1つの成長の形であり、今後もこのような従来の組織の枠組みに捉われない成長の形を追求します。

  • 5.新たな中核事業の発掘・育成と価値革新への取り組み

    新事業開発本部の主導のもと、「2030年ビジョン」の実現に不可欠な「新たな中核事業の発掘・育成」を進めております。お客様の生産プロセスやバリューチェーンに深く入り込み、請負サービス、物流サービスなど様々なサービスを組み合わせて提供する当社グループ独特のビジネスモデルは、業種や地域を問わず、さらなる成長の可能性を有していると考えております。そして、新たな成長のために、ロボット技術などの新技術の業務への取り込みを行いつつ、新しい形の請負サービス・物流サービスなどの開発に取り組み、価値の革新を図ります。具体的な取り組みとして、新技術の研究部署である鴻池技術研究所では、AI技術を用いた画像認識、自動フォークリフトなど、新技術の既存業務への適用について調査・研究を進めております。
    今後も当社グループの強みを生かした新事業の発掘・育成に取り組み、その実現には事業提携やM&Aの活用等も含めて検討いたします。

これらの取り組みを通じて、新中期経営計画の最終年度に当たる2021年3月期には、「2030年ビジョン」の実現に向けた基盤作りを完了するとともに、下記の定量目標達成を目指します。

中期経営計画 定量目標
  初年度
2019年3月期
(実績)
2年目
2020年3月期
(予想)
最終年度
2021年3月期
(当初計画)
売上高 2,941億円 3,131億円 2,950億円
営業利益 109億円 110億円 118億円
ROE 6.4% - 7.0%