経営方針
2030年ビジョン・中期経営計画の詳細につきましては、中期経営計画2027(2026年3月期~2028年3月期)をご覧ください。
1.会社の経営の基本方針
当社グループが、革新を続け持続的成長を果たすために、企業理念を「『人』と『絆』を大切に、社会の基盤を革新し、新たな価値を創造します」とし、当社グループが長い歴史の中で築いてきた信頼と信用、その根幹をなすすべてのサービスの安全・品質に込める強い想いと誇りを示しております。そして、その使命を果たすことを皆様にお約束するために、ブランドメッセージを「私たちの約束:期待を超えなければ、仕事ではない」とし、その「私たちの約束」を具現化するため、全従業員の行動指針として「私たちの覚悟」を定めております。
中長期的な会社の経営戦略・対処すべき課題
当社グループの事業においては人が根幹であり、人材不足の問題は中長期的にも大きな課題と捉えております。2024年4月より適用されたトラックドライバーや建設業の時間外労働時間の上限規制に伴ういわゆる「2024年問題」等もあり、中長期的な国内生産年齢人口の減少等と相まって人材不足はさらに深刻化するものと考えております。加えて、AI、IoT、ビッグデータ、ロボット等の革新的な新技術の活用が進展し、将来的には、あらゆる業界において自動化・省人化が進んでいくと考えられます。その結果、人を介したオペレーション業務が縮小する一方で、業務プロセス全体をコントロールする能力や、 機械・システムに長けた管理・保守・メンテナンス力など人に求められる技術はより専門化かつ高度化していくと捉えています。これら予見される課題に対して、当社グループでは脅威ではなく新たな事業機会として捉えることで永続的な企業価値の向上を実現していこうと考えております。具体的には、これまで培ったお客さまの現場に精通したノウハウを活かし、新技術を取り入れた業務改善・改革によるお客さまへの提供価値の向上、並びに、新たな業務プロセスの効率的な運用に貢献していく所存です。これを実現していくためには、従業員一人ひとりが能力を磨き、持てる真価を遺憾なく発揮できる環境を整えると同時に、業務改善・改革の過程で成長を実感する好循環を作りだしていくことが重要と考えております。このような社会・経済環境の変化及び課題認識を含めて、今般、当社グループが目指す社会基盤の革新に向けて重要課題(マテリアリティ)を整理した上で、これを支える経営基盤の構築を含めた「中期経営計画2027」の策定、及び「2030年ビジョン」の見直しを行いました。
2.重要課題(マテリアリティ)
KONOIKEグループが目指す姿を示す企業理念、および上記の事業環境認識を踏まえ、サステナビリティに関するリスクと機会を整理しました。そのうえで、KONOIKEグループの持続的成長と企業価値向上を実現するうえで、対応すべき重要課題(マテリアリティ)を特定しました。重要課題(マテリアリティ)には、リスクと機会の両面があります。例えば「安全・品質」の場合、維持・向上を通じてお客さまとの取引拡大という機会につながる一方、事故やトラブルの頻発により「安全・品質」が損なわれれば、信頼関係を失うリスクにも直結します。
重要課題(マテリアリティ)の識別は、以下の過程を経て実施されました。
Step1:キーワードの抽出
GRI(Global Reporting Initiative)スタンダード・SASBスタンダード等の国際ガイドライン、および各ESG 評価機関(MSCI・FTSE等)が公表する評価項目を参考に、重要課題の候補となるキーワードをリストアップ
Step2:リスクと機会の特定
各事業部門より3~4名程度プロジェクトメンバーを募集。ワークショップ形式で自由討議を行い、各事業部門にとって重要なサステナビリティ要素、リスク・機会の抽出、および重要度評価を実施
Step3:重要課題(マテリアリティ)の特定
Step2の内容を踏まえ、サステナビリティ委員会・取締役会で複数回の検討を行い、企業理念・2030年ビジョンとの一貫性を考慮した項目の絞り込み、具体的な指標への落とし込み等を実施し、「重要課題(マテリアリティ)」を特定
取締役会・サステナビリティ委員会等での検討実施状況
・サステナビリティ委員会(2024年2月・11月)
・サステナビリティ委員会付属の正副委員長会議(2024年10月、2025年3月・4月)
・取締役会(2024年5月、2025年1月および2025年5月(決議))
また、上記を経て特定された重要課題(マテリアリティ)は、サステナビリティ委員会および正副委員長会議にて、定期的に取り組みの進捗を確認し、経営環境の変化に応じた見直し等の審議を行っています。また、審議の内容は取締役会にも定期的に報告し、取締役会の管理・監督を受けることとしています。
重要課題(マテリアリティ)一覧
| 分類 | 重要課題 | 主な取り組み | 指標 | 25/3期 実績 |
28/3期 目標 |
|---|---|---|---|---|---|
| 人と絆を大切にする | 安全・品質 | お客さまとの信頼関係の基盤 安定的な生産・流通・サービス提供プロセスを下支えする「安全・品質」の維持・向上 |
休業度数率(件/100万h)※1 | 0.24 | 0.17 |
| 労災度数率(件/100万h)※1 | 2.22 | 1.37 | |||
| 自動車事故率(件/100万km)※1 | 0.37 | 0.11 | |||
| お客さまからの表彰件数※2 | 145件 | - | |||
| 人 (人権・ダイバーシティ、人的資本開発) |
「従業員とその家族の幸せ」の追求 当社グループ事業の根幹にある「人」に関し、多様な人材の採用・登用、処遇改善、職場環境改善、教育・学習機会の提供 |
安定的な人材の採用 ①新卒・キャリア採用人数/年※3 ②外国人労働者(特定技能)期末在籍者数※2 |
①107・471人/年
②234
|
①190・-人/年
②600
|
|
| 従業員の処遇改善※2 | - | 200億円以上(3ヵ年) | |||
| 従業員研修費用※3 | 6.6億円 | 7.1億円 | |||
| 従業員研修時間※3 | 20.2時間/人 | 20.5時間/人 | |||
| 女性管理職比率※3 | 4.2% | 5.9% | |||
| 障がい者雇用率※3 | 2.60% | 2.75% | |||
| 男性育児休暇取得率※3 | 70.5% | 100.0% | |||
| ウエルビーイング改善※3 ①サーベイスコア(良好度) ②サーベイスコア(注意度) ③サーベイスコア(モラール・組織の状態) |
①49 ②48 ③4.31 |
①53 ②44 ③4.75 |
|||
| 人権DDサーベイの実施 | - | - | |||
| パートナーシップ ・地域との共存 | 140年以上の歴史を支える「絆」 ●お客さまや取引先との協働、適正な取引関係を通じた新たな価値創造、持続可能なサービス提供体制の維持・構築 ●地域貢献活動 |
一次協力会社評価に基づく訪問社数※2 | 460社 | - | |
| 単価改定・契約見直しに伴う協力会社への還元額※2 | 15.5億円 | - | |||
| 各事業所における社会貢献活動実績※1 ①活動件数(件) ②活動工数(人時) |
①288件 ②1,192人時 |
①- ②- |
|||
| 自治体との災害関連協定締結件数※2 | 15件 | - | |||
| 社会の基盤を革新し、新たな価値を創造する | 社会課題解決に貢献するサービスの提供 | グローバルな社会基盤の革新 ●自動化・機械化や他社との協業を通じた取り組みによる人手不足の解決への貢献 ●当社グループの技術・ノウハウの活用による海外のインフラ整備・経済成長への貢献 |
海外事業売上高・営業利益(億円)※1 | 517億円 18億円 |
780億円 33億円 |
| 海外インフラプロジェクトへの参画件数(累計)※1 | 19件 | - | |||
| グローバル人材育成プログラムの受講人数(累計)※3 | 26人 | 128人 | |||
| 技術革新・DX | 「技術で、人が、高みを目指す」の具現化 ●新技術を活用した新規ソリューション・サービスの開発 ●高付加価値物流サービス ●新技術を活用した教育・労働負荷軽減 |
新統合物流システム展開拠点数※3 | 6/45拠点 | 38/45拠点 | |
| 生成AIを活用した業務改革数※3 | - | ユースケース | |||
| 現場への技術導入実績件数※3 | 24 | 45 | |||
| 現場への技術導入に向けたPoC件数※3 | 38 | 68 | |||
| 鴻池技術研究所イノベーションセンター(技研IC)での技術検証件数※3 | 9 | 18 | |||
| 技術資本ライブラリ登録数※1 | 779件 | - | |||
| 事業活動の基盤 | 気候変動 | 脱炭素・循環型社会への移行・適応 ●省エネ・省資源、新技術導入によるCO2削減業務効率化を通じた排出原単位削減 ●低炭素輸送・モーダルシフトの取り組み |
CO2排出量削減率(19/3期比)※2 | 35.2% | 28.0% |
| ガバナンス・コンプライアンス | 企業価値向上に資するガバナンス・コンプライアンス体制の整備 「公明正大」な企業風土の確立 |
取締役会実効性評価に基づくPDCA | 取組の推進(進捗管理) | - | |
| コンプライアンス関連研修の受講人数※2 | 261人 | - | |||
| 鴻池手帳/経営品質宣言カタリバ※4参加人数※2 | - | - |
- 28/3期 目標の「-」は実績のみトレース
- 1 対象は鴻池運輸㈱および国内外連結子会社
- 2 対象は鴻池運輸㈱および国内連結子会社
- 3 対象は鴻池運輸㈱
3.2030年ビジョン
KONOIKEグループが2030年に目指す姿
技術で、人が、高みを目指す
先端テクノロジーを使いこなす次世代KONOIKEスピリットで、
お客さまと社会の課題解決を図る「現場のあり方」を進化させていきます。
「高みを目指す」とは…
- 新技術を活用し、現場の更なる安全確保と改善・工夫を進め、一人ひとりの創造性を高める豊かな働き方を実現していく。
- 匠の“暗黙知”を、みんなが使えるグループ共通資産という“強み”に変えていき、変化対応力のDNAに磨きをかけていく。
- 安全・安心の水準を高め、次世代の事業創出力を強化し、サステナブルな社会基盤創造へさらなる革新を実現していく。
- 技術とは、新技術・DX等のデジタル技術と従業員個人や現場にあるアナログ技術(改善活動、安全な環境づくり、品質など)との組み合わせを含む幅広い「無形資産」を指す
目標とする経営指標
| 財務目標 | 売上高※1 | 4,600億円 |
|---|---|---|
| 営業利益 | 300億円 | |
| 営業利益率 | 6.5%以上 | |
| ROE | 10%以上 | |
| 海外営業利益※2 | 60億円 | |
| 非財務目標 | 環境 | CO2排出量35%削減(2019年3月期比) |
| 人 | 経営戦略に基づく人材育成の推進 従業員の働き甲斐(エンゲージメント)の向上 |
|
| 技術 | 技術革新・DXによる自動化・省力化 労働環境改善による「安全」の絶えざる追求 |
- 1 売上高はガイドラインとする
- 2 海外営業利益額=海外拠点営業利益―本社費用賦課分
テーマ
成長投資と人・技術・ICT への基盤投資で、
従業員の幸せと企業価値の最大化を実現する。
事業戦略
(a)海外事業拡大
・インド、北中米を注力地域と位置づけ成長を加速
海外においては、今後大きな経済成長が期待されるインド、および、既存の大規模市場である北中米において前中期経営計画に続いて成長投資を継続し、事業展開を加速させてまいります。インドでは製造業の拡大やインフラ整備の進展を背景に、物流や請負サービスへの需要が高まっており、当社グループの国内で培われたノウハウを生かすことで事業機会の拡大を図ります。また、北中米は冷蔵冷凍事業の拡大に加え、フォワーディングを起点としたデザインパッケージング事業とエンジニアリング事業による高付加価値化、新たな顧客開拓を推進してまいります。これらの地域での事業強化は、中期経営計画2027の重要な施策と考えています。
(b)国内事業の成長加速
・サービス分野(メディカル・空港)の強化
・複合ソリューションを含む物流事業を一般・定温・戦略アカウント物流の3領域に分けた戦略展開
複合ソリューション分野では当該業界で確固たる地位を築き、安定した需要が見込まれるサービス分野(メディカル・空港分野)が成長のけん引役となるよう競争力強化と成長加速を進めてまいります。また、国内物流事業を一般・定温・戦略アカウント物流の3領域に分け、それぞれの特性に基づいた事業戦略と領域間の連携強化を実現することにより経営資源の最適化を図ると同時に、お客さまの物流課題を解決する価値創造パートナーとして、より付加価値の高い事業を構築してまいります。
(c)国内事業の成長加速
・既存事業分野での保全/メンテナンス領域の拡大
・KOMBO※活動による生産性向上と事業モデル変革
・事業継続性評価による収益構造の変革
既存事業分野においてはオペレーション領域の事業基盤を活用して、設備関係の保全/メンテナンス業務や、空調設備の改装等のエンジニアリング領域の拡大と高付加価値化を実現することで、請負事業の質的転換と安定的な収益基盤の確保につなげてまいります。また、当社グループ独自の活動(KOMBO活動)として、得意とするお客さまの現場での生産性向上のノウハウをベースに、技術・ICTを活用した効率化・省人化の具現化、ならびに顧客への仕組み改善・改革提案によって収益性向上および事業領域開発に取り組んでまいります。こうした領域拡大と同時に、収益力向上を目指した経営資源の最適化のために、透明性のある新たな事業性評価のしくみ(「事業継続性評価制度」)をスタートさせます。具体的には、国内外のグループ会社を含めた全ての拠点の収益性をROIC・EBITDA・利益規模の観点から評価し、事業継続性審議会にて事業継続/再建・撤退の判断を行ってまいります。
- KOMBO: KONOIKE advanced proposal by the COMBO of solution Know-how and new technology(現場のノウハウと新技術の組み合わせによる新たな提案)
財務・資本政策
当社グループは、中期経営計画2027策定の前提として、株主資本コストは現状8~9%程度と認識し、持続的に企業価値向上を図るべく、人的投資・成⻑投資・維持強化投資などへのバランスの取れた資金配分を進めるとともに、財務安定性を維持しながら株主還元の充実を進めてまいります。
(a)財務・資本政策のありかた
| 前中期経営計画 | 中期経営計画2027 | |
|---|---|---|
| 現預金回転期間 | ― | 1.2 か月程度 |
| DE レシオ | 0.8 以下 | 0.8 以下 |
| 自己資本比率※ | 現行基準:40%以上 |
新リース基準:40~45% (現行基準:45~50%) |
| 格付け(JCR) | A-以上 | A 以上 |
- 2027年度からの新リース会計基準適用に伴い550億円のリース資産(使用権資産)及びリース負債が計上されると仮定し算出。2025年5月現在の基準における水準はカッコ内の通りです。
(b)還元方針について
株主還元については、成長投資と株主還元のバランスを取り、継続的かつ安定的な配当の実現を基本とし、現行の配当性向30%以上から40%以上への引き上げを実施します。加えて、株式の流動性向上を優先しつつ、事業環境や財務状況に応じて自己株式取得も柔軟に検討してまいります。
(c)キャッシュアロケーション
中期的な成長に向けては、「従業員の幸せと企業価値の最大化を実現する」経営方針の下、従業員の処遇改善等の人的投資を3年間で200億円以上実施したうえで、営業キャッシュフロー約730億円を主な財源とし、これに加えて手元資金および有利子負債約180億円の活用を想定し、計画的な投資を推進してまいります。具体的には、成長投資として480億円(M&A枠200億円を含む)を配分し、成長が期待できる空港・メディカル・エンジニアリング事業、地域としてはインド・北中米に重点的に投資、あわせて今後革新的なレベル向上が期待できるDXやAI等の先進技術導入による生産性向上、技術・ICT投資などに取り組んでまいります。また、維持強化投資には240億円を計画しており、既存事業の競争力維持・強化を図ります。
目標とする経営指標
現中期経営計画では、財務目標に加え、2030年ビジョンと同様に非財務面で、「環境」「人」「技術」に関し目標を掲げ、進捗をモニタリングしております。
| 財務目標 | 売上高 | 4,100億円 |
|---|---|---|
| 営業利益 | 260億円 | |
| 営業利益率 | 6.3%以上 | |
| ROE | 10%以上 | |
| 海外営業利益※1 | 33億円 | |
| 非財務目標 | 環境※2 | CO2排出量28%削減(2019年3月期比) |
| 人 | 経営戦略に基づく人材育成の推進 従業員の働き甲斐(エンゲージメント)の向上 |
|
| 技術 | 技術革新・DXによる自動化・省力化 労働環境改善による「安全」の絶えざる追求 |
- 1 海外営業利益額=海外拠点営業利益―本社費用賦課分
- 2 対象範囲は単体及び国内連結会社のエネルギー起源 Scope1,2