※所属・役職名等はインタビュー当時(2024年10月)のものです。
KONOIKEグループは2020年、日本貨物鉄道(株)(以下、JR貨物)の東京貨物ターミナル駅(東京都品川区)構内に立地する東京レールゲートWESTに開設した東京レールゲート営業所(以下、コウノイケ・レールゲート)を開設した。陸・海・空の物流インフラへのアクセスが容易なエリアに拠点を構えることで、モーダルシフトの利便性を高めるのが目的だ。トラック、船舶、航空機、鉄道という選択肢の中から、お客さまにとって最適な輸送手段を提案し、リードタイム短縮やコスト削減、環境負荷の軽減といったニーズに応えている。
「コウノイケ・レールゲート」のプロジェクトは2018年、KONOIKEグループの“横のつながり”を、より強固なものにするために発足した。グループの複数本部が参加するかたちでスタートした同プロジェクトは、それまで各事業本部や支店・営業所などで完結することが少なくなかったトラック、鉄道、航空、海運の各サービスを連携させることで、お客さまにとって最適な輸配送機能を提供できる体制を構築するのが目的だった。
その中核拠点である「コウノイケ・レールゲート」は、JR貨物の東京貨物ターミナル駅構内に立地する東京レールゲートWESTに開設した。東京港から1.5キロ、羽田空港から3.5キロの距離にあり、成田空港にも1時間でリーチできる。陸・海・空をつなぐ物流拠点としては、絶好のロケーションに立地している。
好立地な東京レールゲート営業所(コウノイケ・レールゲート)
「コウノイケ・レールゲート」のミッションは、モーダルシフトの推進だ。モーダルシフトとは、環境負荷の軽減やドライバー人材不足対策のために、トラック輸送の一部あるいは全部を鉄道輸送や航空輸送、海上輸送に切り替えていくことを指す。ここ数年、物流業界の24年問題などを背景に、その取り組みは国内で徐々に広がりを見せつつある。
モーダルシフトの効果は大きい。例えば、鉄道貨物輸送。国土交通省によれば、重さが同じ貨物を同じ距離運んだ場合、鉄道輸送における二酸化炭素(以下、CO2)排出量はトラックの1/10程度とされている。環境への配慮が企業価値に直結する現代において、荷主、物流事業者の双方にとって、鉄道輸送の積極的な利用は対外的に大きなアピール材料になる。
さらに貨物列車は最大26両での編成が可能で、一度に約650トンもの車両を牽引することができる。これは実に10トントラック65台分に相当する。10トントラックの積載量が必ずしも10トンであるとは限らないため、単純に65倍の輸送力というわけではないものの、トラックと比較すると一度に運べる荷量の差は歴然だ。ドライバー不足で輸送力の低下が懸念される中で、鉄道はトラックの代替輸送手段として注目を集めている。
2022年度の日本のCO2排出量は10億3,700万トンだった(国交省調べ)。そのうち運輸部門(自動車、船舶など)が占める割合は1億9,180万トン・18.5%と、産業部門(3億5,226万トン・34.0%)に続いて2番目に多い。さらに運輸部門のCO2排出量のうち、85.8%(1億5,901万トン)が自動車によるものだ。このことからも自動車がいかに多くのCO2を排出しているかが分かる。一方、鉄道は運輸部門のうち3.8%(738万トン)を占めているに過ぎない。
1トンの貨物を1キロ運ぶ(1トンキロ)ときに排出されるCO2はトラックが208グラムであるのに対し、鉄道は20グラムと1/10以下になる。同じ条件の場合の船舶(43グラム)と比べても排出量は半分ほどで済む。
昨今、SDGs(持続可能な開発目標)の1つとして、「環境負荷の軽減」を掲げる大手企業が増えている。KONOIKEグループでもモーダルシフトの取り組みに力を注いでおり、2024年3月末時点では、CO2排出量を年間8,427トン削減することに成功した。
2024年4月にトラックドライバーの時間外労働の規制が強化されたのを受けて、従来のように500キロ超などの長距離をトラックで輸送することが困難になりつつある。それに伴い、注目度が高まっているのが鉄道輸送だ。長距離の幹線部分を鉄道輸送に置き換えることで、トラックは発地と着地の最寄駅までの両端の輸送だけで済むため、長距離運行や長時間労働を回避できるという利点がある。
鉄道輸送は運行スケジュールが比較的安定していることが特徴の一つだが、荷物の到着時間があらかじめ分かっていれば、荷物を引き取るトラックの荷待ち時間(トラックが荷物を受け取るまでにかかる時間)短縮につながる可能性もある。政府は、トラックドライバーの労働環境改善に向けてクリアすべき課題の1つとして、長時間の拘束を強いられる“荷待ち問題”を挙げており、鉄道利用の促進がその解決策にもなり得る。
東京貨物ターミナル駅構内に立地する東京レールゲートWEST内のコウノイケ・レールゲート
KONOIKEグループの鉄道コンテナ
もっとも、これまでは鉄道輸送を利用する条件として、貨物駅の近くに発着地がある事が重要であった。貨物駅から遠い集荷先、納品先になると その分費用がかかる上に希望するリードタイムを維持するのが難しくなる傾向があるからだ。
こうした課題もあることから、貨物駅から遠い荷主でも鉄道輸送を利用しやすくしたのが「トレインクロスドックサービス」だ。鴻池運輸(株)(以下、鴻池運輸)とトランコム(株)(以下、トランコム)が協業し、2024年4月から提供を開始した。
同サービスは、トランコムが展開する、貨物とトラックの空車情報をマッチングする求貨求車事業のネットワークを用いてトラックの手配や集荷を実施。「コウノイケ・レールゲート」で鉄道コンテナに積み替えて、全国に発送するというものだ。
サービスを利用する荷主は、従来通りトラックで出荷するだけ。鉄道コンテナへの積み替えなどの作業を鴻池運輸とトランコムに委ねることができるため、手間なく鉄道輸送を利用できるというメリットがある。
鴻池運輸 東京レールゲート営業所 所長 花屋 圭佑
花屋は「東京貨物ターミナル駅は、日本最大規模の貨物駅です。トラックがこの駅まで荷物を運びさえすれば、全国各地への鉄道輸送を手配できる。このスケールの大きさがトレインクロスドックサービスの真価を発揮するポイントです」と説明する。
「トレインクロスドックサービス」の特長は、東京貨物ターミナル駅から半径300キロという広範囲での集荷が可能な点にある。これにより、貨物駅から遠いことを理由に、これまで鉄道輸送を敬遠していた企業にも新たな選択肢を提供できるようになったという。
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“20年間無事故” を貫くトレーラー運転手 鴻池運輸・東京レールゲート営業所
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モーダルシフト(鉄道輸送)
トレインクロスドックサービス