日EU・EPAとは?協定の概要と効果をわかりやすく解説
国際物流
皆さんは、日本とEUの間には「日EU経済連携協定(日EU・EPA)」が存在することをご存知でしょうか?この日EU・EPAは、日本とEUという世界有数の経済規模を持つ国・地域が、世界最大級の開かれた貿易圏を誕生させるために結んだ貿易協定です。
報道等で見聞きしていても、自身のビジネスに対するメリットを具体的に説明できる人は意外と多くありません。実際、この貿易協定を活用することで日本産品およびEU産品の両方の関税を大きく削減することができます。
そこで今回は、日EU・EPAの概要を説明し、その上で日本とEUの間で工業製品や農林水産品等の輸出入を行う企業の担当者の視点で、日本産品をEUに輸出する場合のメリットおよびEU産品を日本に輸入する場合のメリットについて解説します。
報道等で見聞きしていても、自身のビジネスに対するメリットを具体的に説明できる人は意外と多くありません。実際、この貿易協定を活用することで日本産品およびEU産品の両方の関税を大きく削減することができます。
そこで今回は、日EU・EPAの概要を説明し、その上で日本とEUの間で工業製品や農林水産品等の輸出入を行う企業の担当者の視点で、日本産品をEUに輸出する場合のメリットおよびEU産品を日本に輸入する場合のメリットについて解説します。
日EU・EPAとは?
まず、日EU・EPAとはどのようなものでしょうか?ここでは、日EU・EPAの特徴・意義・歴史的経緯について解説します。
物品貿易に焦点を当てると、日本とEUの双方が大幅な関税撤廃に踏み切っている点が挙げられます。EU側では約99%の品目が関税撤廃の対象となり、日本側も工業製品と農林水産品で差はあるものの、全体として約94%の品目で関税を撤廃しました。
これを日本の輸出者の立場で見ると、EU向けの機械製品や自動車部品などの輸出において、価格競争力が向上したと言えます。また、牛肉・茶・水産物といった輸出重点品目についても有利な条件が確保され、EU市場における取引拡大の機会が広がりました。
一方、輸入面においても、EUブランドのアパレルなどの繊維製品や、EU産ワインをはじめとする農林水産品の関税が即時撤廃されました。これにより、輸入事業者は関税負担を軽減でき、消費者にとっても購入価格の低下という形でメリットがあります。
また、日本とEUが相互の市場開放を図り、貿易・投資が活発化すると、双方の経済成長が促進されます。国の試算によると、日EU・EPAは日本の実質GDPを約1%増加させることが見込まれており、日本の成長戦略の重要な柱としても位置付けられています。
参照元:日 EU・EPA解説書 日 EU・EPAの特恵関税の活用について(JETRO)
実際、日EU・EPA発効後に貿易額は増加し、コロナ禍を挟んで貿易規模は拡大してきました。日EU・EPA発効前の2018年と日EU・EPA発効後の2022年を比較すると、物品貿易とサービス貿易は共に20%以上の増加率を示しています。
参照元:日・EU経済連携協定(EPA)発効5周年(駐日欧州連合代表部)
企業の貿易担当者の視点で見ても、日EU・EPAは自社のビジネスの拡大につながります。日EU・EPAによる貿易・投資環境の改善は、総人口5億人、世界のGDPの約22%を占める、EUという巨大市場へのアクセスを容易にしたと言えるでしょう。
日EU・EPAの交渉は2013年に開始されました。日EU・EPAは、日EU双方の首脳や経済界で早期締結が待ち望まれたものであり、日本においてはアベノミクスの成長戦略における重要な柱ともみなされていました。
その後、複数年にわたる協議を経て2018年に署名、2019年に発効しました。現在では貿易協定の拡充が図られており、後述する「地理的表示(GI)」の追加や「データの自由な流通に関する規定」の追加なども実施されています。
なお、交渉の途中に英国がEUから離脱したため、英国については日EU・EPAが適用されていません。そのため、英国については日EU・EPAに代えて別途「日英包括的経済連携協定(日英EPA)」が締結されました(2021年1月発効)。
これは日本と英国の間の経済関係の維持・強化を目的としたもので、日EU・EPAにおいて日本企業が得ていた利益を確保する狙いがあります。英国と輸出入を行っている日本企業は、日EU・EPAとほぼ同等の効果が期待できます。
日EU・EPAの特徴
日EU・EPAとは、日本と欧州連合(EU)との間で、貿易や投資をはじめとする経済関係の強化を目的として締結された貿易協定です。関税の削減・撤廃に加え、投資や知的財産の保護など、幅広い分野を包括的にカバーしていることが特徴です。物品貿易に焦点を当てると、日本とEUの双方が大幅な関税撤廃に踏み切っている点が挙げられます。EU側では約99%の品目が関税撤廃の対象となり、日本側も工業製品と農林水産品で差はあるものの、全体として約94%の品目で関税を撤廃しました。
これを日本の輸出者の立場で見ると、EU向けの機械製品や自動車部品などの輸出において、価格競争力が向上したと言えます。また、牛肉・茶・水産物といった輸出重点品目についても有利な条件が確保され、EU市場における取引拡大の機会が広がりました。
一方、輸入面においても、EUブランドのアパレルなどの繊維製品や、EU産ワインをはじめとする農林水産品の関税が即時撤廃されました。これにより、輸入事業者は関税負担を軽減でき、消費者にとっても購入価格の低下という形でメリットがあります。
日EU・EPAの意義
日本とEUは、共に自由貿易体制を重視する立場にあります。世界的な保護貿易主義の動きが強まる国際環境の中、日本とEUが自由・公正・開放的な国際貿易体制の構築を主導することで、世界に継続的な貿易自由化の意志をPRできます。また、日本とEUが相互の市場開放を図り、貿易・投資が活発化すると、双方の経済成長が促進されます。国の試算によると、日EU・EPAは日本の実質GDPを約1%増加させることが見込まれており、日本の成長戦略の重要な柱としても位置付けられています。
参照元:日 EU・EPA解説書 日 EU・EPAの特恵関税の活用について(JETRO)
実際、日EU・EPA発効後に貿易額は増加し、コロナ禍を挟んで貿易規模は拡大してきました。日EU・EPA発効前の2018年と日EU・EPA発効後の2022年を比較すると、物品貿易とサービス貿易は共に20%以上の増加率を示しています。
参照元:日・EU経済連携協定(EPA)発効5周年(駐日欧州連合代表部)
企業の貿易担当者の視点で見ても、日EU・EPAは自社のビジネスの拡大につながります。日EU・EPAによる貿易・投資環境の改善は、総人口5億人、世界のGDPの約22%を占める、EUという巨大市場へのアクセスを容易にしたと言えるでしょう。
日EU・EPAの歴史的経緯
日EU・EPAの交渉は2013年に開始されました。日EU・EPAは、日EU双方の首脳や経済界で早期締結が待ち望まれたものであり、日本においてはアベノミクスの成長戦略における重要な柱ともみなされていました。その後、複数年にわたる協議を経て2018年に署名、2019年に発効しました。現在では貿易協定の拡充が図られており、後述する「地理的表示(GI)」の追加や「データの自由な流通に関する規定」の追加なども実施されています。
なお、交渉の途中に英国がEUから離脱したため、英国については日EU・EPAが適用されていません。そのため、英国については日EU・EPAに代えて別途「日英包括的経済連携協定(日英EPA)」が締結されました(2021年1月発効)。
これは日本と英国の間の経済関係の維持・強化を目的としたもので、日EU・EPAにおいて日本企業が得ていた利益を確保する狙いがあります。英国と輸出入を行っている日本企業は、日EU・EPAとほぼ同等の効果が期待できます。
日本産品をEUに輸出する場合のメリット
続いて、日本産品をEUに輸出する場合のメリットについて解説します。ここでは、工業製品の事例としてタイヤ、農林水産品の事例として牛肉を取り上げて説明します。
また、農林水産品については、日本の輸出重点品目である牛肉・茶・水産物などを中心に、ほとんどの品目で関税の即時撤廃が図られました。日本食人気が高まり、需要の増加が見込まれる中、日本産の農林水産品の輸出拡大の追い風になることが期待されます。
このように、日本にとって輸出品目としての重要性が高いカテゴリーにおいてEU側の関税が大きく変更されました。既にEUとEPAを結んでいる韓国などと競争する上で不利な条件が解消され、より公平な形でEU市場にアクセスできる環境が整っています。
まずは、工業製品の関税撤廃の事例として、タイヤを取り上げます。
日EU・EPA発効以前には4.5%の関税が課されていましたが、日EU・EPA発効後に即時撤廃されました。タイヤをはじめとする自動車部品は日本企業が得意とする品目であり、EU内の自動車生産においても日本製品が使用されています。
日EU・EPAによる関税分のコスト削減は、更なる取引拡大や新規顧客の獲得に有利に働きます。そして、EUの 自動車産業との関係が強まった日本の部品メーカーはサプライチェーンへの深い関与が可能になります。その結果、日本の自動車部品はなくてはならない存在となり、ビジネスパートナーとしての地位も確立することができます。
なお、ここではタイヤを取り上げましたが、ガソリンエンジンや自動車用エアコンなどの他の自動車部品もほとんどが関税の即時撤廃の対象とされています。いずれも日本企業の競争力が強い品目であり、タイヤと同様の状況になることが予想されます。
日EU・EPA発効以前にはさまざまな従価税や従量税が課されていましたが、日EU・EPA発効後はいずれも即時撤廃の対象となっています。牛肉は日EU・EPA発効以前には従価税(12.8%)と従量税(141.4〜304.1ユーロ/100kg)の関税が課されていました。そのため、日本産の牛肉をEU側で輸入する際に多額の関税コストが必要になり、輸出拡大の大きな障壁となっていました。
日EU・EPA発効後は関税が即時撤廃され、価格面で強い競争力が発揮できるようになりました。関税が撤廃されたことでEUの人も高品質・高付加価値な和牛に容易にアクセスできるようになり、日本食人気も相まって、EU域内での需要が拡大しています。
さらに重要なポイントとして、地理的表示(GI)の保護があります。地理的表示(GI)とは、地域固有の自然条件や人々の営み、社会的背景の中で培われてきた品質や評価といった特徴を持つ産品の名称を、地域の知的財産として保護する仕組みです。
日EU・EPAにおいては、EU域内での神戸ビーフ(兵庫県)や米沢牛(山形県)などの名称保護が認められています。これにより、日本各地で育まれてきた牛肉の高いブランド価値がEU域内においても守られることになります。
以上から、日EU・EPAでは日本が強みとする輸出品について、強力な輸出ドライブとなる措置が盛り込まれていることが理解できるでしょう。EU向けにこれらの製品を輸出している企業様は、日EU・EPAの活用を是非ご検討ください。
例えば、日本でも人気の高いEUブランドの繊維製品については、日EU・EPAの発効と同時に関税が撤廃されています。また、農林水産品についても、EU産ワインをはじめとする品目を中心に、関税の撤廃や段階的な削減が実施されました。
一方で、コメや麦・乳製品など一部の品目については、一定の関税措置が継続されるなど、品目ごとに異なる取り扱いがなされていることが特徴です。
総じて見ると、EU側の関心が高い品目については、日本が関税の撤廃や段階的な削減を進めていることがわかります。ただし、日本の食料安全保障に直結する品目については、従来の関税制度を維持する姿勢も明確に示されています。
日EU・EPA発効以前には、EUから輸入されるスーツには10.9%の基本税率が適用されていましたが、日EU・EPA発効後は無税となりました。EU産のスーツは高級生地が特徴的であり、都市部の百貨店などにおいて高価格で販売されています。
これまでは関税分のコストが含まれていましたが、関税がかからなくなることで、輸入・販売事業者は同じ品質のまま、リーズナブルに販売できるようになります。
その結果、品質の高いEUブランドのスーツに関心がある消費者の需要を喚起することができるようになり、売上拡大を図ることができます。消費者にとっても、スーツ選びの選択肢が広がることになるという恩恵が及びます。
なお、EU製のブランド品というカテゴリーでは、皮革・履物も人気がありますが、こちらは関税が即時撤廃されていないため注意が必要です。皮革・履物については日EU・EPA発効後11年目または16年目の関税撤廃が予定されており、2026年現在では関税が課されています。
従来、EU産ワインは従価税(15.0%)もしくは従量税(125円/リットル)のいずれか低い方という関税が課されていましたが、日EU・EPA発効後は関税が即時撤廃され、価格面での不利な条件を回避できるようになりました。
このことは、既に関税面で有利な立場にあった他国産のワインと公平な競争ができることを意味します。
例えば、TPP(環太平洋パートナーシップ)協定で既に関税が撤廃されていたチリ産ワインは、EU産ワインと比較しても有利なポジションにありました。日EU・EPA発効後はEU産ワインについても関税が撤廃されてチリ産ワインと同じ条件となり、品質やブランド力といった要素で競争できる環境が整いました。
もちろん、消費者にも同じ条件で多様な選択肢の中からワインを購入できるようになるというメリットがあります。
以上から、EU産品についても、日本の輸入・販売業者や消費者にとって大きなメリットがあることがわかります。
ただし、ここでは詳細に解説しませんでしたが、一部の農林水産品については国内生産者保護の意図もあり、制度の対象外となっているものがあります。EUからの輸入品に日EU・EPAの活用を考える際はこのバランスについてしっかり理解しておく必要があります。是非、貿易協定の活用に精通した物流業者にご相談ください。
日EU・EPAは、日本とEUという先進国・地域同士が貿易・投資などの経済関係の強化を目的に締結した貿易協定です。その意義は貿易自由化の推進や経済成長の促進、そして輸出入取引を行う企業にとってのビジネスの拡大にまで及びます。
そして、日EU・EPAには、我々にとって身近な製品の事例でもわかるように、価格競争力の強化や地理的表示(GI)の保護、輸入・販売事業者の事業の拡大や消費者の選択肢の増加などの具体的なメリットがあります。
この記事を参考に、皆様も日EU・EPAの活用に積極的に取り組んでいただければと思います。
当社鴻池運輸には、1980年代からの海外展開で蓄積された豊富なノウハウと世界に広がるグローバルネットワークがあり、お客様の国際物流を支えることができます。北中米、中国、アセアン、インドを中心にフォワーディングをはじめ、ロジスティクス、コントラクト、エンジニアリング、パッケージング、トレーディングなど様々な事業を展開。
国際貿易業務に限らず、海外展開でのお困りごとがあれば、お気軽に当社までお問い合わせください。詳しくは、こちらの「国際物流」のページをご参照ください。
概要
日EU・EPAの発効により、日本からEUへ輸出される多くの品目で関税が撤廃または段階的に削減されました。特に日本の強みである自動車産業などへの影響は大きく、乗用車は8年目の関税撤廃、自動車部品は多くが即時撤廃とされ、関税コストが大きく下がりました。また、農林水産品については、日本の輸出重点品目である牛肉・茶・水産物などを中心に、ほとんどの品目で関税の即時撤廃が図られました。日本食人気が高まり、需要の増加が見込まれる中、日本産の農林水産品の輸出拡大の追い風になることが期待されます。
このように、日本にとって輸出品目としての重要性が高いカテゴリーにおいてEU側の関税が大きく変更されました。既にEUとEPAを結んでいる韓国などと競争する上で不利な条件が解消され、より公平な形でEU市場にアクセスできる環境が整っています。
工業製品の事例:タイヤ
まずは、工業製品の関税撤廃の事例として、タイヤを取り上げます。日EU・EPA発効以前には4.5%の関税が課されていましたが、日EU・EPA発効後に即時撤廃されました。タイヤをはじめとする自動車部品は日本企業が得意とする品目であり、EU内の自動車生産においても日本製品が使用されています。
日EU・EPAによる関税分のコスト削減は、更なる取引拡大や新規顧客の獲得に有利に働きます。そして、EUの 自動車産業との関係が強まった日本の部品メーカーはサプライチェーンへの深い関与が可能になります。その結果、日本の自動車部品はなくてはならない存在となり、ビジネスパートナーとしての地位も確立することができます。
なお、ここではタイヤを取り上げましたが、ガソリンエンジンや自動車用エアコンなどの他の自動車部品もほとんどが関税の即時撤廃の対象とされています。いずれも日本企業の競争力が強い品目であり、タイヤと同様の状況になることが予想されます。
農林水産品の事例:牛肉
続いては、牛肉を例に取り上げます。農林水産品には、肉類や青果物、水産物などが含まれます。日EU・EPA発効以前にはさまざまな従価税や従量税が課されていましたが、日EU・EPA発効後はいずれも即時撤廃の対象となっています。牛肉は日EU・EPA発効以前には従価税(12.8%)と従量税(141.4〜304.1ユーロ/100kg)の関税が課されていました。そのため、日本産の牛肉をEU側で輸入する際に多額の関税コストが必要になり、輸出拡大の大きな障壁となっていました。
日EU・EPA発効後は関税が即時撤廃され、価格面で強い競争力が発揮できるようになりました。関税が撤廃されたことでEUの人も高品質・高付加価値な和牛に容易にアクセスできるようになり、日本食人気も相まって、EU域内での需要が拡大しています。
さらに重要なポイントとして、地理的表示(GI)の保護があります。地理的表示(GI)とは、地域固有の自然条件や人々の営み、社会的背景の中で培われてきた品質や評価といった特徴を持つ産品の名称を、地域の知的財産として保護する仕組みです。
日EU・EPAにおいては、EU域内での神戸ビーフ(兵庫県)や米沢牛(山形県)などの名称保護が認められています。これにより、日本各地で育まれてきた牛肉の高いブランド価値がEU域内においても守られることになります。
以上から、日EU・EPAでは日本が強みとする輸出品について、強力な輸出ドライブとなる措置が盛り込まれていることが理解できるでしょう。EU向けにこれらの製品を輸出している企業様は、日EU・EPAの活用を是非ご検討ください。
EU産品を日本に輸入する場合のメリット
反対に、EU産品を日本に輸入する場合のメリットにはどのようなものがあるのでしょうか?ここでは、工業製品の事例としてスーツ(羊毛製)、農林水産品の事例としてワインを取り上げて解説します。概要
日EU・EPAでは、日本がEUから輸入する品目についても、関税の撤廃または段階的な削減措置が講じられました。例えば、日本でも人気の高いEUブランドの繊維製品については、日EU・EPAの発効と同時に関税が撤廃されています。また、農林水産品についても、EU産ワインをはじめとする品目を中心に、関税の撤廃や段階的な削減が実施されました。
一方で、コメや麦・乳製品など一部の品目については、一定の関税措置が継続されるなど、品目ごとに異なる取り扱いがなされていることが特徴です。
総じて見ると、EU側の関心が高い品目については、日本が関税の撤廃や段階的な削減を進めていることがわかります。ただし、日本の食料安全保障に直結する品目については、従来の関税制度を維持する姿勢も明確に示されています。
工業製品の事例:スーツ(羊毛製)
工業製品の代表例として、EU産のスーツ(羊毛製)を取り上げて解説します。日EU・EPA発効以前には、EUから輸入されるスーツには10.9%の基本税率が適用されていましたが、日EU・EPA発効後は無税となりました。EU産のスーツは高級生地が特徴的であり、都市部の百貨店などにおいて高価格で販売されています。
これまでは関税分のコストが含まれていましたが、関税がかからなくなることで、輸入・販売事業者は同じ品質のまま、リーズナブルに販売できるようになります。
その結果、品質の高いEUブランドのスーツに関心がある消費者の需要を喚起することができるようになり、売上拡大を図ることができます。消費者にとっても、スーツ選びの選択肢が広がることになるという恩恵が及びます。
なお、EU製のブランド品というカテゴリーでは、皮革・履物も人気がありますが、こちらは関税が即時撤廃されていないため注意が必要です。皮革・履物については日EU・EPA発効後11年目または16年目の関税撤廃が予定されており、2026年現在では関税が課されています。
農林水産品の事例:ワイン
EUは世界有数のワイン生産地であり、日本ではフランス産やイタリア産のワインなどが広く親しまれています。日EU・EPAはワインの関税率についても取り決めがなされており、ワインの輸入・販売業者には販売が促進される環境が整っています。従来、EU産ワインは従価税(15.0%)もしくは従量税(125円/リットル)のいずれか低い方という関税が課されていましたが、日EU・EPA発効後は関税が即時撤廃され、価格面での不利な条件を回避できるようになりました。
このことは、既に関税面で有利な立場にあった他国産のワインと公平な競争ができることを意味します。
例えば、TPP(環太平洋パートナーシップ)協定で既に関税が撤廃されていたチリ産ワインは、EU産ワインと比較しても有利なポジションにありました。日EU・EPA発効後はEU産ワインについても関税が撤廃されてチリ産ワインと同じ条件となり、品質やブランド力といった要素で競争できる環境が整いました。
もちろん、消費者にも同じ条件で多様な選択肢の中からワインを購入できるようになるというメリットがあります。
以上から、EU産品についても、日本の輸入・販売業者や消費者にとって大きなメリットがあることがわかります。
ただし、ここでは詳細に解説しませんでしたが、一部の農林水産品については国内生産者保護の意図もあり、制度の対象外となっているものがあります。EUからの輸入品に日EU・EPAの活用を考える際はこのバランスについてしっかり理解しておく必要があります。是非、貿易協定の活用に精通した物流業者にご相談ください。
まとめ
日EU・EPAの概要や日本産品をEUに輸出する場合のメリットおよびEU産品を日本に輸入する場合のメリットについて解説しました。日EU・EPAは、日本とEUという先進国・地域同士が貿易・投資などの経済関係の強化を目的に締結した貿易協定です。その意義は貿易自由化の推進や経済成長の促進、そして輸出入取引を行う企業にとってのビジネスの拡大にまで及びます。
そして、日EU・EPAには、我々にとって身近な製品の事例でもわかるように、価格競争力の強化や地理的表示(GI)の保護、輸入・販売事業者の事業の拡大や消費者の選択肢の増加などの具体的なメリットがあります。
この記事を参考に、皆様も日EU・EPAの活用に積極的に取り組んでいただければと思います。
当社鴻池運輸には、1980年代からの海外展開で蓄積された豊富なノウハウと世界に広がるグローバルネットワークがあり、お客様の国際物流を支えることができます。北中米、中国、アセアン、インドを中心にフォワーディングをはじめ、ロジスティクス、コントラクト、エンジニアリング、パッケージング、トレーディングなど様々な事業を展開。
国際貿易業務に限らず、海外展開でのお困りごとがあれば、お気軽に当社までお問い合わせください。詳しくは、こちらの「国際物流」のページをご参照ください。
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