国際輸送の保険「外航貨物海上保険」とは?概要と注意事項、適用事例をわかりやすく解説
国際物流
国際輸送では貨物の輸送に1カ月以上かかることもありますが、輸送中の貨物はさまざまなリスクにさらされ、大きな損害を被る可能性もあります。そのような際に、経済的損失をカバーする役割を果たすのが国際輸送保険(外航貨物海上保険)です。
外航貨物海上保険は国際輸送に係るさまざまなリスクに対して備えるものであり、国際貿易の契約条件(インコタームズ)の中には保険を必須とするものもあります。貨物の輸出入に関わるビジネスパーソンとしては外航貨物海上保険を理解することは必要不可欠です。
今回は、外航貨物海上保険の概要と補償内容、保険期間と金額、そして実務担当者としての注意事項などについて解説します。
外航貨物海上保険は国際輸送に係るさまざまなリスクに対して備えるものであり、国際貿易の契約条件(インコタームズ)の中には保険を必須とするものもあります。貨物の輸出入に関わるビジネスパーソンとしては外航貨物海上保険を理解することは必要不可欠です。
今回は、外航貨物海上保険の概要と補償内容、保険期間と金額、そして実務担当者としての注意事項などについて解説します。
外航貨物海上保険の概要
まず、外航貨物海上保険とはどのようなものでしょうか?ここでは、貨物保険が必要とされる背景と貨物保険における外航貨物海上保険の位置づけ、そしてその特徴について解説します。
たとえば、日本のコンテナ船社を統合して設立されたONE(Ocean Network Express)のB/L約款では、「1梱包または1単位につき100英ポンド」もしくは「滅失または損傷を受けた貨物の総重量1キログラムあたり2SDR」までと決められています。
なお、このSDR(Special Drawing Right)とはIMF(国際通貨基金)により定義される特別引出権を指し、主要国の通貨を基準に算出される国際準備資産の1つです。2025年9月時点では1SDRは200円前後と評価されています。
参照元:Exchange Rate Archives by Month(IMF)
いずれの基準であっても補償額としては最低限であり、輸送貨物が高額商品の場合、経済的損失を補填するものとしては不十分です。したがって、その差額をカバーするため、貨物保険の付保が必要となります。
■貨物保険の区分
国際輸送に適用されるのは、外航貨物海上保険となります。名称の中に「海上」が含まれていますが、海上輸送に限定されることなく、すべての輸送手段による輸送を保険の対象とすることができます。
また、売主と買主の間で使用する言語や商慣習が異なることが多い国際貿易で使用されるため、英文証券の形態をとる場合が多く見られます。過去にイギリスを中心とした国際貿易の仕組みが形成されてきた経緯もあり、イギリスの法や慣習に準拠した運用が行われるという特徴もあります。
インコタームズによっては外航貨物海上保険が必須となっている場合があり、国際輸送では欠かすことのできない要素といえます。なお、日本の輸入通関では運賃と保険料も含めた取引価格(CIF価格)で申告することが求められます。
貨物保険が必要とされる背景
輸送における事故の補償は運送約款において定められています。国際輸送の場合は運送約款の役割を持つB/Lの裏面にその規定が記載されていますが、その内容は国際条約に準拠したものであり、運送企業の責任制限額が決まっていることが一般的です。たとえば、日本のコンテナ船社を統合して設立されたONE(Ocean Network Express)のB/L約款では、「1梱包または1単位につき100英ポンド」もしくは「滅失または損傷を受けた貨物の総重量1キログラムあたり2SDR」までと決められています。
なお、このSDR(Special Drawing Right)とはIMF(国際通貨基金)により定義される特別引出権を指し、主要国の通貨を基準に算出される国際準備資産の1つです。2025年9月時点では1SDRは200円前後と評価されています。
参照元:Exchange Rate Archives by Month(IMF)
いずれの基準であっても補償額としては最低限であり、輸送貨物が高額商品の場合、経済的損失を補填するものとしては不十分です。したがって、その差額をカバーするため、貨物保険の付保が必要となります。
貨物保険における外航貨物海上保険の位置づけ
貨物保険は3種類に分かれており、輸送範囲(国際/国内)と輸送手段(海上/陸上/航空)によって区分されています。その区分内容については下記のマトリクス表と説明をご参照ください。■貨物保険の区分
| 海上 | 陸上 | 航空 | |
|---|---|---|---|
| 国際輸送 | ①外航貨物海上保険 | ||
| 国内輸送 | ②内航貨物海上保険 | ③国内運送保険 | |
- ①外航貨物海上保険:国際輸送において全ての輸送手段で運ばれる貨物を対象とした保険
- ②内航貨物海上保険:国内輸送において海上輸送で運ばれる貨物を対象とした保険
- ③国内運送保険:国内輸送において陸上輸送及び航空輸送で運ばれる貨物を対象とした保険
国際輸送に適用されるのは、外航貨物海上保険となります。名称の中に「海上」が含まれていますが、海上輸送に限定されることなく、すべての輸送手段による輸送を保険の対象とすることができます。
外航貨物海上保険の特徴
外航貨物海上保険は、貨物の破損や盗難、火災や爆発、もしくは船舶等の沈没などによって生じた経済的損失を補償する保険です。必ずしも商取引の対象となっている貨物である必要はなく、サンプル品なども保険の対象となっています。また、売主と買主の間で使用する言語や商慣習が異なることが多い国際貿易で使用されるため、英文証券の形態をとる場合が多く見られます。過去にイギリスを中心とした国際貿易の仕組みが形成されてきた経緯もあり、イギリスの法や慣習に準拠した運用が行われるという特徴もあります。
インコタームズによっては外航貨物海上保険が必須となっている場合があり、国際輸送では欠かすことのできない要素といえます。なお、日本の輸入通関では運賃と保険料も含めた取引価格(CIF価格)で申告することが求められます。
外航貨物海上保険の補償内容
外航貨物海上保険における補償内容は「海上危険」「戦争危険」「ストライキ等危険」の3つに大別されます。ここでは、それぞれの補償内容について解説します。
この協会貨物約款は「Institute Cargo Clauses(ICC)」と呼ばれており、海上危険ではカバーする損害の範囲に応じて3つに区別されます。また、戦争危険やストライキ危険については別途特約が設けられています。
協会貨物約款の適用
国際貿易は世界各国にまたがって行われるため、外航貨物海上保険はいずれの地域でも解釈の相違なく運用される必要があります。そのため、国際輸送保険の中心地である英国のロンドン保険市場で作成された「協会貨物約款(2009年約款)」が広く活用されています。この協会貨物約款は「Institute Cargo Clauses(ICC)」と呼ばれており、海上危険ではカバーする損害の範囲に応じて3つに区別されます。また、戦争危険やストライキ危険については別途特約が設けられています。
海上危険
海上危険とは、火災・爆発をはじめとする輸送中のさまざまなリスクの包括的な名称を指します。ICCはICC(A)、ICC(B)、ICC(C)の区分されており、それぞれの特徴は次のとおりです。
具体的なリスクと照らし合わせた保険金の支払いのパターンは外航貨物海上保険を提供する保険会社のホームページ等をご参照ください。
なお、ICCのいずれのパターンでも補償される共同海損とは、海上輸送において海難事故に遭遇した際に、船舶や貨物などの安全を守るために船長判断で意図的に行った行為に関する費用や損害をすべての利害関係者で公平に負担する仕組みのことを意味します。
具体的には、船舶のバランスが崩れて沈没の危機に直面した際に、一部の貨物を海中に投棄して船舶の安定を取り戻すことなどを指します。この場合、投棄された貨物の荷主だけではなく、その行為によって沈没を免れた船主や他の荷主も共同で損害を分担します。
これらは協会戦争約款(Institute War Clauses=IWC)や協会ストライキ約款(Institute Strikes Clauses=ISC)に基づいた特約によって補償されます。地域紛争などの影響を受けて保険料率が変わることがありますので、常に最新の情報を確認することが重要です。
具体的な損害内容については外航貨物海上保険を提供する保険会社のHP等をご確認ください。
- ①ICC(A):補償範囲が最も広く、主なリスクを包括的にカバーする
- ②ICC(B):補償範囲は広いが、汚破損や盗難などのリスクはカバーされない
- ③ICC(C):補償範囲が最も狭く、基本的なリスクのみカバーする
具体的なリスクと照らし合わせた保険金の支払いのパターンは外航貨物海上保険を提供する保険会社のホームページ等をご参照ください。
なお、ICCのいずれのパターンでも補償される共同海損とは、海上輸送において海難事故に遭遇した際に、船舶や貨物などの安全を守るために船長判断で意図的に行った行為に関する費用や損害をすべての利害関係者で公平に負担する仕組みのことを意味します。
具体的には、船舶のバランスが崩れて沈没の危機に直面した際に、一部の貨物を海中に投棄して船舶の安定を取り戻すことなどを指します。この場合、投棄された貨物の荷主だけではなく、その行為によって沈没を免れた船主や他の荷主も共同で損害を分担します。
戦争危険・ストライキ等危険
戦争危険とは、戦争や内乱等、及びそれらから生じる捕獲・拿捕など、そして遺棄兵器(機雷や爆弾など)による滅失・損傷などを指します。また、ストライキ等危険とは、ストライキ等で生じた労働紛争等の過程の中で生じる滅失・損傷などを意味します。これらは協会戦争約款(Institute War Clauses=IWC)や協会ストライキ約款(Institute Strikes Clauses=ISC)に基づいた特約によって補償されます。地域紛争などの影響を受けて保険料率が変わることがありますので、常に最新の情報を確認することが重要です。
保険金が支払われない場合
協会貨物約款(ICC)では保険金が支払われない場合もあります。たとえば、「故意・違法行為」や「スケジュール遅延」などにより損害が該当し、ICCでは基本的に補償されません。具体的な損害内容については外航貨物海上保険を提供する保険会社のHP等をご確認ください。
外航貨物海上保険の保険期間と金額
保険期間と金額も非常に外航貨物海上保険を語る上で重要なテーマです。ここでは、保険期間と金額の詳細について解説します。
海上危険及びストライキ等危険では、保険の開始時点と終了時点が次のように厳密に定義されています。ここでは、開始時点の「初めて動かされた」と終了時点の「荷下ろしが完了した」という点が重要です。
①開始時点:
仕出地における倉庫または保管場所において、輸送の開始のために輸送車両または他の輸送用具に保険の目的物を直ちに積込む目的で、保険の目的物が初めて動かされた時
②終了時点:
保険証券で指定された仕向地の最終の倉庫または保管場所において、輸送車両またはその他の輸送用具からの荷卸しが完了した時
※通常の輸送過程を経ることが前提
ただし、次の条件に該当するときは輸送中であっても保険期間が終了するとされます。
①外航本船から荷卸しされて60日経過したとき
②航空機輸送の場合は、荷卸し後30日経過したとき
③通常の輸送過程にあたらない保管または仕分け等のために倉庫において荷卸しされたとき
戦争危険の場合、海上危険及びストライキ等危険とは異なり、保険期間は貨物が外航本船(または航空機)に積載されている期間に限られます。たとえば、貨物が陸上で保管されている間は補償の対象外となります。
まず、保険金額は1回の保険事故に対して保険会社が支払う保険金の最高限度額を指します。ただし、保険金額=補償額ではない点にご注意ください。外航貨物海上保険の保険金額はCIF価格(船積原価+保険料+運賃)の110%で決められるのが一般的です。
また、保険料率は保険料を算出するための料率を意味します。この保険料率は原則として自由料率であり、貨物内容や積載船舶、発着地の状況などの条件、もしくは国際情勢の変化に応じて適用料率が変化します。
保険期間
保険期間は、海上危険・ストライキ等危険と戦争危険で異なります。海上危険及びストライキ等危険では、保険の開始時点と終了時点が次のように厳密に定義されています。ここでは、開始時点の「初めて動かされた」と終了時点の「荷下ろしが完了した」という点が重要です。
①開始時点:
仕出地における倉庫または保管場所において、輸送の開始のために輸送車両または他の輸送用具に保険の目的物を直ちに積込む目的で、保険の目的物が初めて動かされた時
②終了時点:
保険証券で指定された仕向地の最終の倉庫または保管場所において、輸送車両またはその他の輸送用具からの荷卸しが完了した時
※通常の輸送過程を経ることが前提
ただし、次の条件に該当するときは輸送中であっても保険期間が終了するとされます。
①外航本船から荷卸しされて60日経過したとき
②航空機輸送の場合は、荷卸し後30日経過したとき
③通常の輸送過程にあたらない保管または仕分け等のために倉庫において荷卸しされたとき
戦争危険の場合、海上危険及びストライキ等危険とは異なり、保険期間は貨物が外航本船(または航空機)に積載されている期間に限られます。たとえば、貨物が陸上で保管されている間は補償の対象外となります。
保険金額
実際に保険料を払う立場で考えると、貨物の補償額を左右する「保険金額」と、保険料の基準となる「保険料率」について理解しておく必要があります。まず、保険金額は1回の保険事故に対して保険会社が支払う保険金の最高限度額を指します。ただし、保険金額=補償額ではない点にご注意ください。外航貨物海上保険の保険金額はCIF価格(船積原価+保険料+運賃)の110%で決められるのが一般的です。
また、保険料率は保険料を算出するための料率を意味します。この保険料率は原則として自由料率であり、貨物内容や積載船舶、発着地の状況などの条件、もしくは国際情勢の変化に応じて適用料率が変化します。
外航貨物海上保険を付保する場合の注意事項
外航貨物海上保険を付保する上でどのような点に注意が必要でしょうか?最後に、輸出者と輸入者に分けて実務上の注意事項を解説します。
CIFやCIP以外のインコタームズの場合は付保の義務はありませんが、輸入者が外航貨物海上保険を付保する場合に備えて船積書類を輸入者に送付する必要が生じます。他にも、輸出者は自己のリスク負担の範囲を考慮して必要な保険を手配することが求められます。
ただし、輸出者の船積状況がすぐに把握できない場合は予定保険という形で先に保険の申し込みを行います。実務的にはまず予定保険の付保を行い、国際輸送のリスクが開始された後に確定保険に切り替えます。
なお、継続的に貿易を行う輸出入者の場合、一定の期間を対象に包括的な予定保険を付保することも可能です。これにより、付保忘れを避けることができるだけではなく、都度申し込みの工数を削減し、事務作業の効率化を図ることができます。
国際輸送に関連するさまざまなリスクでは、それが一度顕在化すると巨大な経済的損失につながる傾向にあります。そのようなリスクに備えて、国際輸送保険に加入することは決して無駄なことではありません。外航貨物海上保険の理解を深め、自社の貨物に対して必要な補償内容に応じて適切な保険を付保できるようにしてください。
当社鴻池運輸には、1980年代からの海外展開で蓄積された豊富なノウハウと世界に広がるグローバルネットワークがあり、お客様の国際物流を支えることができます。北中米、中国、アセアン、インドを中心にフォワーディングをはじめ、ロジスティクス、コントラクト、エンジニアリング、パッケージング、トレーディングなどさまざまな事業を展開。
国際貿易業務に限らず、海外展開でのお困りごとがあれば、お気軽に当社までお問い合わせください。詳しくは、こちらの「国際物流」のページをご参照ください。
輸出者としての注意事項
CIFやCIPなどのインコタームズの場合、輸出者は外航貨物海上保険を付保する義務があります。輸出者は積載船名を確定した時点で保険会社に確定保険を申し込み、保険料支払いののち、保険証券を入手します。CIFやCIP以外のインコタームズの場合は付保の義務はありませんが、輸入者が外航貨物海上保険を付保する場合に備えて船積書類を輸入者に送付する必要が生じます。他にも、輸出者は自己のリスク負担の範囲を考慮して必要な保険を手配することが求められます。
輸入者としての注意事項
インコタームズにおけるEグループやFグループ、CIFとCIP以外のCグループなどの場合、輸入者は自己のリスク負担に応じて外航貨物海上保険を付保します。ただし、輸出者の船積状況がすぐに把握できない場合は予定保険という形で先に保険の申し込みを行います。実務的にはまず予定保険の付保を行い、国際輸送のリスクが開始された後に確定保険に切り替えます。
なお、継続的に貿易を行う輸出入者の場合、一定の期間を対象に包括的な予定保険を付保することも可能です。これにより、付保忘れを避けることができるだけではなく、都度申し込みの工数を削減し、事務作業の効率化を図ることができます。
まとめ
外航貨物海上保険の概要と補償内容、保険期間と金額、そして実務担当者としての注意事項や外航貨物海上保険の適用事例について解説しました。国際輸送に関連するさまざまなリスクでは、それが一度顕在化すると巨大な経済的損失につながる傾向にあります。そのようなリスクに備えて、国際輸送保険に加入することは決して無駄なことではありません。外航貨物海上保険の理解を深め、自社の貨物に対して必要な補償内容に応じて適切な保険を付保できるようにしてください。
当社鴻池運輸には、1980年代からの海外展開で蓄積された豊富なノウハウと世界に広がるグローバルネットワークがあり、お客様の国際物流を支えることができます。北中米、中国、アセアン、インドを中心にフォワーディングをはじめ、ロジスティクス、コントラクト、エンジニアリング、パッケージング、トレーディングなどさまざまな事業を展開。
国際貿易業務に限らず、海外展開でのお困りごとがあれば、お気軽に当社までお問い合わせください。詳しくは、こちらの「国際物流」のページをご参照ください。
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お問い合わせはこちらより承ります。