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変化の大きいグローバル社会の中で、KONOIKEグループが未来に描く姿とは何か。
かつてアップルの米国本社副社長、日本法人代表として数々の大ヒット商品を上市し
優れたマーケティング力で市場を切り拓いてきた前刀 禎明氏を、
KONOIKEのDNAがいまも息づく軽井沢「姫島荘」にお招きし、
鴻池社長とともに、そのビジョンを熱く語っていただいた。

※本対談は、2022年9月18日に、創業者・鴻池 忠治郎が晩年を過ごした「姫島荘」で実施したもので、記載の役職等は対談当時のものです。

鴻池 忠彦 (こうのいけ ただひこ)
2003年より代表取締役社長、2021年
より現職。連結従業員
数 約23,000名
を擁するKONOIKEグループを率いる。

前刀 禎明 (さきとう よしあき)
ソニー、ベイン・アンド・カンパニー、ウォルト・ディズニー、
AOLなどを経て、アップル米国本社副社長兼日本法人代表
取締役に就任。2007年、株式会社リアルディアを設立、独
自のセルフ・イノベーション事業を展開している。

SPECIAL CONVERSATION MOVIE

〈要約版〉
27分36秒

〈全文版〉
53分22秒

SPECIAL CONVERSATIONINDEX

  1. 原点があり、先人たちの支えがあるからこそ、今がある。
  2. お客さまの期待を超え、未来を創っていく勇気を持とう。
  3. 現場との距離を縮め、「感じ取る⼒」を⼤切にしていきたい。
  4. 「技術で、⼈が、⾼みを⽬指す」は、⼈の可能性を信じるメッセージ。
  5. ⼤切なのは、⾃分を解放し、壁を超え、新しい価値を創造すること。
  6. 私たちのルーツを再認識することで、未来をより明確に想像できる。
  7. 昨⽇の⾃分を超えて、ワクワクする未来を創っていこう。
姫島荘フォトギャラリー
原点があり、先人たちの
支えがあるからこそ、今がある。
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鴻池ここ「姫島荘」は、現在の大阪市西淀川区姫島で創業者・鴻池忠治郎が晩年を過ごした住まいです。私が先代から受け継ぎ、建築の専門家の方々の力をお借りして、軽井沢に移築しました。最初は建物も土地も処分するつもりだったのですが、建築の専門家の方に見てもらったところ、寝室の押し入れに「ここに仏壇がありましたね」とおっしゃるんです。

前刀仏壇?押し入れの中にですか?

鴻池はい。寝室の先に蔵があり、寝室は蔵への出入り口になっていたんですね。つまり、創業者が蔵の番人としてご先祖様の仏壇の前で毎日寝ていたと。仏壇の存在を聞いた瞬間、 ここを取り壊すなんて、とんでもないバチが当たると思ったわけです。

前刀今であればセンサーやセキュリティカメラを付けますが、創業者の忠治郎さんが「俺が守ってるんだ」と、自らそこにいらっしゃったんですね。軽井沢への移築とともに、忠治郎さんも一緒に来て、この素晴らしい環境に喜ばれていると思います。

鴻池私もいつも家内と話していますが、創業者の意志が私を動かしたという気がしています。

前刀面白いですね。人生もビジネスも、結果的にこういうふうに導かれて、うまくいっている。

鴻池そういうのはありますよね。自然に道ができて、道順がある。ひとつのステップを進んだら、次のステップがちゃんと見えてくる。

前刀流されるのではなく「導かれる」んですね。私の人生は、いい時と悪い時の振れ幅が大きいのですが、世の中には大きな流れがあって、俯瞰して見れば、すごく大きな右肩上がりの矢印の中に自分の人生がある、と捉えています。すると、今調子悪いなと思っても何年か前の自分よりちょっと上にいることが分かったりするので、安心して生きていられるんです。ただ、最初から安心や安定を求めてその場に留まる意識だと、結果的には人生もビジネスも下がっていってしまうので、やはり少しでも一歩ずつ上がっていくような感覚を常に持ち続けたいと思いますね。

創業者・鴻池忠治郎が晩年を過ごした「姫島荘」。当時の雰囲気そのままに軽井沢の地へ移築されている。

鴻池そう考えると、ものすごくポジティブになります。短い周期で見て下がっている時でも、全体の方向として大きく俯瞰で見れば、やはり間違いなく成⻑していると。

前刀はい。「導かれる」のと同じように大きな流れに支えられながら、しかし、自分一人で全てを成し遂げることはできないので、人の助けを得ながら進んでいく。鴻池運輸130年史の中にある、皆さんが後ろを向いた写真から感じられるように、たくさんの人々に支えられてきた歴史がある。その多くの背中の一番先に、忠治郎さんがいらっしゃったわけですね。そういう流れというものは、とても大切だと思います。

鴻池先人たちがいてくれたからこそ、今があると、過去を振り返って感謝する気持ちがこみ上げて、胸が熱くなった思い出があります。

前刀その時お感じになったことがご自身の中でものすごく大きなエネルギーになったと思いますね。そのエネルギーを使って、さらにこれから未来を拓いていく。明日のKONOIKEには無限の可能性がある、くらいのつもりで、どんどんイメージが膨らんで未来を創っていければ、こんな幸せなことはないですね。

鴻池はい。ですが、私たちは無理に成⻑・発展しようとは意識していません。しかし、停滞はしたくないといつも考えています。周囲の環境は刻々と変化していますから、外の人の話を聞き、知恵を借りるなどして、間違った方向に行かないように自分の価値観を修正していくことが、すごく大事なことだと常々思っています。

お客さまの期待を超え、
未来を創っていく勇気を持とう。
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前刀そういったインプットはとても⼤切ですが、最近、逆に⾃分へのインプットが⼤好き過ぎる⼈も多いんですよ。アウトプットがないのに、とにかくインプットし続けるような。

鴻池さまざまな学習などでしょうか。

前刀はい。変化する世の中で、深く本質を学ぶインプットであればいいのですが、表⾯的な部分だけを追いかけて、変化へ必死に追いつこうとする企業も多く⾒られます。ある⽅がシリコンバレーに⾏くというので理由を聞いたら、上司がとにかくフィンテックをやりたいと。その他にも、RPAやDXといったキーワードが先⾏し、追いつくことが⽬的化してしまっていることも多いと思いますが、⼀番⼤切なのは「ここから先の未来を創っていく」という姿勢や態度だと思います。⾃分が変わって世の中を変えるんだっていうぐらいの気概ですね。

鴻池逆に、インプット全くなしでアウトプットだけしても、それは独りよがりですよね。

前刀よくマーケットインとかプロダクトアウトって⾔いますね。どちらも⼤事ですが、私が以前働いていたアップルで、スティーブ・ジョブズがこんなことを⾔っていました。「⼈は何が欲しいかなんて分からない。それを⽬の前に出されて、使ってみて、いいと思って、初めて欲しくなる」と。最もいい例が2007年に発売されたiPhoneです。どんなに優秀な調査会社もその頃電話からテンキーがなくなるという予測はできなかった。そのような事前調査ではなく、「ユーザーにとって最⾼なものは何なのか」ということを⾃ら徹底的に考えることが重要なんですね。それを考えるためのインプットはとても⼤切になるわけです。

鴻池そうですね。

前刀KONOIKEグループはアウトプットすることをすごく得意とされていらっしゃると思いますので、それは引き続き強みとしながら、さらに上⼿にインプットをして、⾃分なりの新しい価値を⽣み出していかれるというのが、素晴らしいことだと思います。

鴻池それは、何か新しい提案をしていくということですか。

前刀そうですね。その時にどうしても邪魔になるのが「普通は…」という会話です。世の中は「普通」を求めてはいません。やはり新しい価値を提案していくということがすごく重要だと思いますね。

鴻池運輸株式会社 代表取締役会長兼社長執行役員 鴻池 忠彦

鴻池私たちの現場は、平均すると⼤体200名程度の従業員がいる事業所が、国内に150〜160ヶ所くらいあります。それぞれの⻑が現場を任され、⽇々の課題を⼀⽣懸命考えているのですが、⾃分たちなりのアイデアを実⾏すると、思った以上に成果が出ることもある。そのような⼩さな成功を重ねていくと、達成感を得て⾃信もつき、顧客のニーズをさらに深堀りして提案する。そういう⾵⼟の事業所がたくさんある会社なので、今おっしゃっていただいたような、⾃らがそこで何をすべきかを考える機会というのは、結構多くあるのかもしれないですね。

前刀私もよく⾔っているのですが、お客さま以上にお客さまのことを考えないといけないと。最低限の仕事をして顧客満⾜を得ながらも、さらにその先の、お客さま⾃⾝もまだ気付いていない、深いところにある本質的な課題を⾒極めて、それを提供できれば、まさに御社が追求している「期待を超える」というところにつながっていきますね。

鴻池私もいつも同じことを⾔っています。私たちは基本的に請負が基本ですが「お客さまはなぜその依頼を私たちにしてこられたのか?」を考えてみようと。すると、お客さまが気づいていなかった悩みや困りごとが⾒えてきて、⼀つ上の提案ができる。依頼された背景を考えるということですね。

前刀なるほど。ところで、お客さまに価値を提供しなくてはいけない時に、⼈はどうしても⼤きな不安を持ちますよね。今はSNS などで周囲の⼈のいいところばかりが⽬に付くようになってきて、「⾃分だけができていないんじゃないか」というような不安を持つんですね。

鴻池⼈にはコンプレックスとの戦いがあって、「他⼈よりも〇〇が劣っている」とか、⾃分をものすごく制約してしまいますね。

前刀ところがよく話を聞いてみると、他の⼈も同じように不安を抱えていると知ると「⾃分だけじゃない」と安⼼できる。「⾃分なんて」と思っていた⼈が、「自分だって」できるかもしれないという希望が芽⽣えてくる。そして「じゃあやってみようかな」っていう⼩さな勇気を持てる。勇気を持ってやったら成功して、⼩さな⾃信ができる。すると、さらに新しいチャレンジをしていける。お客さまに喜んでいただいて、まさに「期待を超える」と、もっと頑張ってみようという気持ちになりますね。

鴻池そうおっしゃっていただくと不安もなくなりますね。本来は素晴らしいところがいっぱいあるのに、⾃分⾃⾝で閉じ込めてしまっている。そんなコンプレックスを取っ払えば、⾃分のいいところをもっと正々堂々と⾒せられる。間違っているなら、批判してくれというくらいに。⾃分の道を⾏くぜというふうに⾃信につながっていけば、会社がもっと活き活きとしてくると思います。

現場との距離を縮め、
「感じ取る⼒」を⼤切にしていきたい。
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鴻池今、社員と対話をする時間をつくっています。⼀⼈20分程度、1対1で、リアルやオンラインでさまざまな層の⼈たちと話します。⾃分の考えも伝えられるし、相⼿が想いや考えを社⻑に伝える機会にもなります。現場の話はなかなか社⻑の⽿に⼊ってこないので、⾃分にとっても⾮常に貴重な時間です。

前刀良い取り組みですね。

鴻池ある時、現場に⾏ったら「社⻑に会えるとは思っていなかった。雲の上の存在だと思っていた」と⾔われて、すごくショックで、こういう関係はダメだなと痛感しました。できるだけ現場との距離は縮めたいと思いますね。対話の時に私は皆に「この時間は⼆⼈で共有する時間にしよう」と⾔っています。私が⼀⽅的に伝えるのではなく、皆さんからも社⻑に教えてほしいと。

前刀とても⼤切な考え⽅です。その結果、どんなことが起こっていますか?

鴻池2年近く続け、少しずつその距離が縮まってきましたし、企業理念である「⼈」と「絆」が以前よりは間違いなく太くなりました。ある時、財務・経理の⼈と話をしていた時に、私たちの仕事は間違えないでやるのが当たり前。でも間違えると叱責される。当たり前ですが、私たちは365⽇のうち364⽇は間違えず、しっかりちゃんと仕事をやっています、と。ところが間違えた1⽇だけ叱られ、364⽇は特に評価もないのがむなしい、と。そういう本⾳を聞いて、確かにその通りと思いました。私たちは「安全」や「品質管理」が企業ブランドを維持するために根底にある⼤事なものですから、あって当たり前で感謝もされないというのは、やっぱりいけないなと思いました。

現場との距離を縮め、企業理念である「人」と「絆」は、以前より間違いなく太くなったと語る鴻池。

前刀なるほど。それで、何かを変えられましたか。

鴻池はい。表彰制度や「鴻池⼤賞」など、価値を讃える仕組みをつくりました。それは⼀つ進歩した事例なのですが、表彰状を渡しながら話をしていたら「社⻑から表彰いただくのはうれしいけれど、⾃分たちの仕事現場で実際に仕事をする場を⾒てもらうほうがもっとうれしい」という話を聞きました。

前刀対話から良いコミュニケーションが⽣まれてきましたね

鴻池そこで、いろいろな現場に⾏くと、誇らしげに仕事を⾒せてくれるわけですね。私たちはこういうことをやってるんですよ、と。「社⻑、すごいでしょう」「うん、すごいね」と、現場で社員と話す時間が以前より増えたように思います。

前刀本当にいいことをしていらっしゃいます。紙でレポートで上がってくるのとは全然違いますね。社⻑ご⾃⾝が⾃ら感じ取り、現場の⼈たちも社⻑に⾒てもらえるとやりがいにつながっていく。社⻑としても現場で得る情報量というのはものすごくありますよね。

鴻池より現場の理解が深まりますので、雰囲気だけで「この現場はうまくいってるな」とか「ここはちょっと問題があるのかな」というのは感じることができます。

前刀そういった社⻑ご⾃⾝の感性や好奇⼼というのは、すごく⼤切だと思います。

「技術で、⼈が、⾼みを⽬指す」は、
⼈の可能性を信じるメッセージ。
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鴻池当社の事業所の⼀つに⽇本製鉄様の東日本製鉄所鹿島地区があり、50年以上前の製鉄所ができた当初から私たちが仕事をやらせていただいています。そこでの仕事に、製鉄所内で鉄鉱⽯や⽯炭を運ぶために縦横無尽に張り巡らされたベルトコンベアを管理する業務があります。ベルトコンベアは両端にプーリー(滑⾞)があって回転しており、ベルトの中間部分にはベルトを⽀える無数のローラーがあります。それらが鉄鉱⽯の影響で錆びると回転せずに固着してしまうのですが、その状態でベルトコンベアがすごいスピードで流れると⼤きな摩擦が起こり、摩擦が原因で⽕災が発⽣することがあるんです。それを防ぐために、私たちがベルトコンベアの横を歩いて、回転が鈍くなった時に発⽣するキーキーという⾳を、神経を集中して聞きながら点検して回るんですよ。不良箇所を⾒つけてメンテナンス部隊に連絡すると、スタッフがそこに⾏って補修します。

前刀とてつもなく⼤変な作業ですね。

鴻池そこで、何かテクノロジーを使って効率化できないかと、⽀店⻑が現場のスタッフに課題解決の機会として与えたんですね。すると、彼らが⼀⽣懸命考えてくれて、ドローンのカメラにサーモグラフィーをつけ、上空からローラーの摩擦の熱感知を可能にする⽅法が開発されたんです。

前刀それはすごい。

鴻池総延⻑50〜60キロという⻑い距離を、これまでは歩いて⾳で感知していたのが、⼀瞬にしてピンポイントでチェックできるようになったんです。私たちは「技術で、⼈が、⾼みを⽬指す」という2030年ビジョンを掲げてさまざまな取り組みを始めていますが、これはその⼀つの例です。

ドローンの技術を駆使して、製鉄所のベルトコンベア安全点検に優れた効率化を実現している。

前刀そもそも、「⾳」で感知していた感性も素晴らしいと思いますが、⼈の⼒に頼らざるを得なかった。しかし、今はドローンで圧倒的に的確に省⼒化できる。そういった技術の活⽤はどんどん進めるべきと思いますね。「技術で、⼈が、⾼みを⽬指す」というビジョンは、社員の皆さんのことを信じているし、その可能性を信じて発信しているメッセージだと僕は思います。

鴻池ありがとうございます。

前刀変わらず続けてやっていらっしゃることを、技術で置き換えることができれば、⼈はさらに⾼い価値創造へチャレンジしていけるということですね。「希望は⾃分でつくりだせ」も、⾃分がそうなりたいと思って変わっていかなければ⼈は変わっていけないというメッセージだと思います。

鴻池はい、⼈のための技術⾰新だと考えています。

前刀私は、⾃分⾃⾝を成⻑・⾰新させることを「セルフイノベーション」と呼んでいます。技術や⼈、どんなことからも学ぶ姿勢ですね。そのように学び続ける知性を「ラーニングインテリジェンス」と呼び、それを⾼めるために必要な、⾃発的にワクワクしながら学ぶことを「ワンダーラーニング」と呼んでいます。こういった考え⽅を提唱し、さまざまなプロジェクトに取り組んでいます。KONOIKEグループの社員の皆さんも、まさに成⻑・⾰新のチャンスですよね。「技術で、⼈が、⾼みを⽬指す」と会社が⾔ってくれているということは、⼀⼈ひとりが⾼みを⽬指していいということですね。

⼤切なのは、⾃分を解放し、
壁を超え、新しい価値を創造すること。
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鴻池今の話を聞いて思いましたが、⾃分たちだけで課題解決を試みても限界があるけれど、他の技術や他の⼈の知恵を活⽤させてもらい、いろいろな組み合わせを実現することによって課題解決を考えていけば、何か⾶躍的にいろいろなことができるようになるかなと。物流業界の中だけでなく、ITの専⾨家、⼤学の研究室にも助けてもらい知恵をもらいながら課題解決に取り組めればいいですね。

前刀おっしゃるように、視野が狭いと、固定観念や前例、既成概念で型にはまってしまいます。まずやるべきは、そういったものから⾃分を解放するということです。解放した上で、⾃分たちが何をやりたいのか、何を求められているのか、を追求し、⾃分たちを再定義する。⼈はある程度できると満⾜してしまう。それを避けるには、さらに⾃分たちを超え続けていくというステップが必要です。⽬の前のリアルを観察して、⾏く末を想像しながら⾃問⾃答する。机上の空論に終わらせることなく、思いついたことを試してみる。考えた通りだったなということもあるし、いや全然違うことが起きてしまったりもする。

鴻池それはいいですね。

前刀何がいいかというと、新たな発⾒があることだと思います。違う価値観、業種の⼈と話してみると、お互いに新発⾒があり、成⻑につながる。⼀番重要になってくるのは、⾃分が得たものを、全部⾃分なりに関連づけていくことだと考えています。これは「創造的知性」と⾔われていますが、新しい価値を⽣み出していくことだと思います。

鴻池「右脳・左脳」とでよく⾔われますが、右脳でイメージを創り上げることがすごく⼤事なのかなと思っています。論理的に積み上げていってもなかなかできない。

前刀そうなんです。とてもいいことをおっしゃっていただきました。論理的思考は必要ですが、常識による関連性ではなく、⾃分なりの関連性を⽣み出していくっていう部分がすごく右脳的であり、重要なことです。「ひらめき」というのは偶然のようなことではなくて、⼈が脳の中で何かをずっと考え続けることで、頭の中で忘れてしまっている経験や膨⼤な知識が瞬時に結びつくことです。いわゆる左脳の論理的思考以上に多くの情報にリーチして出てくる答えなので、より素晴らしいはずだと思っています。

株式会社リアルディア 代表取締役社長 前刀 禎明

鴻池私も朝起きた時にパッと何かを思い浮かんだりすることがありますが、論理的に物事を説明するのは⾮常に苦⼿で、⼝下⼿なんです。いつも、どうしたらいいのか…と思うのですが。

前刀それは⾃分でやらなくていいと思います。得意な⼈にやってもらうといいです。⽇本⼈は「何でもできる⼈」を優秀だとする価値観がありますよね。だから、⽋点を克服しようとします。でも、それはやらないほうがいい。例えば、テニスで、⽇本ではバックハンドが苦⼿であればバックハンドばかり練習させられる。ところが⽶国だと、フォアハンドが得意であればフォアハンドばかり練習させられる。それが強い武器になってすごく強いプレーヤーになっていく。⽇本⼈は、苦⼿なことばかりを練習している間に、得意なもののレベルが落ちてしまうんですね。企業も同じです。

鴻池ありがとうございます。安⼼しました。⼈の⼒を借りて、助けてもらえばいいですね。⾃分の⻑所や強みを活かして、⾃分が不得意なところは、⼈の助けを借りていくと。

前刀はい。クリエイティブなことだと思います。課題や問題意識を頭の中へくさびとして打ち込んでいく。その時に答えはなくても、無意識のうちに、それに関連した情報を感知するようになる。それがある程度固まってくると、ある瞬間にひらめく。

鴻池私も、いつもいろんな⽅々に私が⾔うことを⼀⽣懸命まとめていただいています。

前刀右脳的なことを右脳的に分かる⼈もいれば、そうではない⼈も結構いるので、右脳的なことをいかに左脳的に説明をするのかが、ビジネスの現場では求められている。ですから、それも持ちつ持たれつであって、得意な⼈にやってもらえばいいと思います。そういうのは全然気にすることなく、右脳活性化をおすすめします。

鴻池右脳型⼈間の⽅は、今の⾔葉で勇気づけられると(笑)

前刀私はもう完璧に右脳タイプで、物事をイメージで捉えます。

鴻池⼈は⾃分の⽋点や弱みばかり気にして、せっかくの強みが活かされていない。これはとてももったいないですよね。

前刀何かをできないことが⾃分の個性です、というくらいの感じがいいと思いますよ。

私たちのルーツを再認識することで、
未来をより明確に想像できる。
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鴻池ここ姫島荘は、創業者が⾃分のもとで働く多くの⼈々の苦労をねぎらった場所です。床が分厚くつくられていて、併設されていた蔵にはたくさんの⼤⽫がありました。明治、⼤正、昭和の初期の⼤変な時に、ここで創業者から⾷事やお酒を振る舞ってもらうことは、働く⼈々にとって楽しみでもあり、誇りでもあったと思います。

前刀まさに御社のDNAの場所ですね。

鴻池はい。ですから、今の⼈たちにもここに来てもらうことで、時代を超えて先⼈とつながる気がしますし、私たちの理念である「⼈」と「絆」をあらためて強く感じると思います。そして、⾃分たちのルーツを再認識することで、未来をより明確に想像することができる。これはとても⼤切なことだと思います。

前刀過去は古臭いことではなく「先⼈たちが未来を創ってくれた結果が、今」ということですよね。先輩⽅がやってくれたように、⾃分たちも未来を創っていくことが、また未来の⼈たちにつながっていく。姫島荘に来て、まさにその感覚を五感で味わうことで、覚悟といいますか、未来へのつながりをより強くしていこうと思える場所だと感じました。

創業140年を超える歴史の中で、多くの先人たちが一歩ずつ工夫を重ね、未来を創ってきた。

鴻池未来を創っていくことは、ものすごくワクワクしますし、楽しいことだと思います。不安やリスクも当然ありますが、すごくクリエイティブで、⾃分のチャレンジに評価をもらったり、結果を出すことにつながる。そういう場を与えてもらうことは、ものすごく楽しい。舞台のステージに上がって演じさせてもらう機会を与えてもらっている。将来に向かって、どんどんクリエイトしていくというイメージでしょうか。

前刀それは、決して世の中に流されていくことではなく、⾃分たちが未来をこう創造していくと考えることですね。よく「⽼害」のような話も出てきますが、なぜ起きるかというと、経験豊かな⼈が⾃分の経験の表⾯的な⽅法論だけを押し付けようとするので、若い⼈から⾒ると「⽼害」になってしまう。そうではなく、例えば御社のドローン技術の採⽤といった⽅法論は、時代とともに新しいものをどんどん導⼊すればよく、⼤切なのは、何のためにそれが必要なのかを⾒極めることです。いわゆる本質的な価値ですね。

鴻池その通りです。

前刀ベテランの経験が、若い⼈たちの新しいやり⽅で置き換えられつつ、本質の部分を継承し、活かしてもらって、また新しい未来を創造する。この連鎖ですよね。だから、今を⽣きている⼈たちは、⾃分たちが学んだことや先⼈の学びも参考にしながら、本質を形にして伝えていくということが⼤事だと思います。

鴻池⾃分だけで創り上げたものなんてないですし、そんな考え⽅はおこがましいですね。先⼈が継承したものや築いたものを我々は使わせてもらっている。

昨⽇の⾃分を超えて
ワクワクする未来を創っていこう。
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前刀KONOIKEブランドの「私たちの覚悟」の項⽬に「昨⽇の⾃分を超えているか」という内容の指針がありますが、これはすごく⼤事ですね。私も講演でよく話す中に「必ず⼈は成⻑できる。だから、昨⽇の⾃分よりも今⽇の⾃分。そして明日の自分、さらに成長した自分がいる」という内容があります。これをずっと続けていくことが重要だと思います。

鴻池それをプレッシャーと感じずに、楽しみや喜びとしてできる会社でありたい。

前刀富も名声も得て⼤成功した⼈たちに「⼈⽣における成功は何か」という問いかけをすると、お⾦や名誉ではない。やはり、⾃分ならではのことをやって、それが⼈の役に⽴っていることなんですね。それが⾃分の⽣きがいになると。KONOIKEグループの社員の皆さんにも、⾃分の⼈⽣を⾃分で選択して、少しでも成⻑実感を感じてもらいたい。昨⽇の⾃分よりも今⽇少しでも成⻑していれば、すごく充実したものを感じることができると思います。

鴻池うちの現場に⾏って、いろいろな作業を⾒せてもらうと、まさにすごいというような、匠の技術を⾒ることができます。ところが、やっている本⼈は「そうですか?すごいですか?」と⾔う。当⼈たちは⾃覚がなくて当たり前のことをやっているつもりなので、実はすごいよと⾔ってあげたくなる。

前刀そうなんですよね。⾃分の強みって分からないものです。ですから、2030年ビジョンの「技術で、⼈が、⾼みを⽬指す」の「技術」も、テクノロジーだけではなく、⼈が持っている匠の技もありますし、思考も技術です。「技術」の定義をもっと広く捉えれば、本当に⼈を幸せにできるものだと思いますね。

鴻池はい。そういうふうに考えていくと、うちの現場の⼈たちはもっともっと⾃分たちの⼒を再認識して、それが⾃信につながって、もっともっと挑戦してみよう、お客さまの課題を解決してみよう、ということにつながっていくんじゃないかと思います。

前刀そうですね。私が常々⾔っていることに、「させる」という⾔葉を使わないようにしたいということがあります。⾃分たちがこういうふうに期待を超えさせられるとか、挑戦させられるではなくて、⾃らがどんどん期待を超えていく。⾃分が⾃分を超えていく。そういうことですね。

鴻池私が昔から好きな⾔葉に「⼤いなる好奇⼼、果てしないロマン」があります。好奇⼼を持って、⼤きな夢を持って、肩の⼒も抜いて、⾃分の⼒を信じて、取り組む。もちろんお客さまは⼤切にしながら、⾃分たちの会社、ブランドに誇りを持って、⼈は⼈、⾃分は⾃分と、我道をゆく。KONOIKEイズムで、我々はこう考えるんだ。これが我々の⽅針なんだと、⾃信を持って進んでいきたいですね。

前刀会社の明確なビジョンのもと、⼈がまた、それぞれのビジョンを描く。好奇⼼を持って、イメージを膨らませて、⼀⼈ひとりが⾃らの可能性を信じてくれれば、確実にビジョンを実現することができる。会社全体が幸せになることはもちろん、それを⽀える⼀⼈ひとりが、充実した働き⽅や⽣きがいを持ってチャレンジしていければ、こんな楽しいことはないんだと思います。

鴻池はい。今⽇はこうしていろいろお話をして、これからの2030年に向けて、⾮常に明るいKONOIKEの将来が⾒えてきたような気がします。私⾃⾝もすごく楽しみにしています。本当にありがとうございました。

前刀こちらこそ、ありがとうございました。

KONOIKE 2030 VISION

2030年ビジョン数値目標について
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